小林弘樹さん(30)=新潟市中央区=が取材から編集、誌面デザイン、さらに営業までたったひとりですべてをこなす新潟のローカルインタビュー誌『LIFE-mag.(ライフ・マグ)』のvol.6「燕三条」特集が完成。地元を中心に少しずつ販売が始まっている。
A4判80ページで840円。握りばさみを作る鍛冶職人、三条市の外山健さん(72)が赤めた鉄を金づちでたたく作業場での風景が表紙を飾り、ことし1月から三条市の9人と燕市の5人の14人に行ったインタビューを収録する。
対象は国定勇人三条市長や人間国宝となった燕市の金工作家玉川宣夫さん、燕市のPR大使に決まった元プロレスラーのキラー・カンさん、三条市のイラストレーター遠藤ケイさん。地元で知られた人ばかりはなく、燕市吉田地区の下中野神楽舞にスポットライトを当てたり、スノーピークの地元の店長やカフェの店主に話を聞いたりとさまざな分野の燕三条の“人”を取り上げた。
人によって2ページから14ページまでボリュームはまちまちで、顔写真のない人もあるなど、しばりはゆるく自由な誌面構成。自身で撮影したクオリティーの高い写真と洗練されたレイアウトがインタビューを引き立てる。さっそく完成した『LIFE-mag.』を手にした国定市長は、ブログ「三条市長日記」で、「素直に嬉しいものです。」と書き、掲載を喜んだ。地元の人たちが見るのとは違った、小林さんのフィルターを通して見る燕三条が描写されている。
小林さんは、地元メディアの情報が「ラーメンと温泉と美容室」に偏っている状況に疑問をもち、5年前の24歳の夏、「人間をもっと大切に扱う媒体がほしい」と使命感にかられ、『LIFE-mag』を創刊した。
2009年に4号を発行したところで資金難から休刊。再就職したものの『LIFE-mag』への情熱は収まらなかった。勤め先を退職して昨年4月から佐渡特集の取材にとりかかり、同9月に発行して復刊を果たした。佐渡特集の巻末ですでに次号は燕三条特集と宣言し、それが今回、実現した。
それまで小林さんは燕三条とはまったく接点がなかった。知り合いもいなかったが、ひとりひとり、人をたどって多くの人たちと付き合いを増やした。小林さんは「三条の町は明るいなと。三条マルシェを中心にいろんなイベントをやってて、あか抜けた感じをうらやましいと思いました」と魅力を話す。
ものづくりのまちに受け継がれる職人や技術にもひかれた。「一人ひとりの生き方を通して命と歴史を見る。自分が発明したわけじゃなく、自分の血と肉に変えている。このまちで生きてきた先人の命をバトンタッチしている」と小林さんはと燕三条の魅力を表現。『LIFE-mag』を通して「命のリレーを感じてもらえたら」と話す。
初版は3,000部。早期に完売して二刷りができたらと願う。二刷りでは20ページほど増ページするプランもある。
これまでの号でもインタビューした人によるトークライブなど、誌面を飛び出した生のイベントを行った。今回も燕三条にちなんだイベントを開きたい考えで、燕三条特集は今も制作のプロセスのなかにあり、発行はひとつの節目とも言える。
本来は7月1日発行で、書店に限らずカフェや飲食店、ギャラリー、ショップなどでの取り扱いの依頼に回っているところ。ひとまず書店では知遊堂三条店で販売しており、『LIFE-mag.』の取り扱い、販売をしてくれる店や個人を募集している。問い合わせは小林さん(電話・ファクシミリ:025-378-3258、電子メール:niigata@life-mag.com)へ。インタビューした14人は次の通り。敬称略。