3月26日の経済財政諮問会議で安倍晋三首相から地域経済団体などから地域経済の実情を聞いてきめ細かく対応するよう指示があったことを受けて、内閣府の西村康稔副大臣が2日、三条商工会議所を訪れて燕三条地域の経済団体の経営者と地域経済に関する懇談会を開いた。政府の産業競争力会議が今月半ばにとりまとめる成長戦略は詰めの段階で、西村副大臣は「きょうの意見をしっかりとわれわれのなかで受け止めて議論したい」と述べた。
4月から全国各地で地域経済に関する懇談会を開いており、今回が7回目の開催。翌3日は長野県松本市で同様の懇談会を開く。この日は地元から三条、燕の商工会議所の正副会頭や日本金属ハウスウェア工業組合の正副理事長ら12人が出席。地元選出の自民党国会議員も同席した。
初めに西村副大臣があいさつした。西村副大臣は、安倍政権はアベノミクスで順調なスタートを切ったが、期待先行は否めず、株価の調整もあるとした。政策は大企業向けと思われがちだが、「地域を大事にし、中小企業を大事にするということころは今回の成長戦略、あるいは骨太の方針でも大きなひとつの柱」で、地域の声をしっかり聞くように安倍首相の指示を受けた。
三条、燕は「昔からものづくりの拠点として有名な所」で、経産省に籍を置いた十数年前、集積法つくるときに訪れて以来の燕三条地域の訪問。それからどう変わり、進化したか取り組みを聞きたい。金融政策、財政政策、成長戦略の3本の矢が進展し、中小企業から新分野に取り組み、新商品開発に取り組んでもらおうと、前政権でなくなった「ものづくり補助金」を復活させ、すでに新潟県内で180件以上が第一次の募集で認められた。
「皆さん方のご意見を含めて、反映をさせていただいて地域が、中小企業が元気になるように、そしてこれからも成長戦略、日本が成長していく、その中核を担っているいただけるように」と期待。補正予算も着実に執行しており、「この夏くらいには景気回復の声が6月、7月から徐々に出てくるのでは」と見通しを示した。
続いて三条、燕の商工会議所会頭があいさつ。三条商工会議所の斉藤弘文会頭は、同商議所は会員が2,300人と多く、組織をしっかり維持していると表彰され、ことしは伊勢神宮の式年遷宮で、そこに使われる和釘や金具は三条の鍛冶で作られたものを納めていることをアピールした。
1月の商工会議所の総会で、経営課題として外交問題、エネルギー問題、3月で終わった中小企業金融円滑化法の影響の3つをあげた。ことし4月になって三条市内でも3件の優良企業の倒産があり、心配が現実になった。消費税率は確実に上がると思わるので外税にしてほしいと求めた。
燕商工会議所の山崎悦次会頭は、アベノミクスには「基本的には大賛成」とした。安倍首相の言うように長期的には大いに期待しているが、この円安はまだ本当の円安ではなく、燕地区は海外マーケットが多いので、「今の円安を安定していただきたい」。せっかくの円安をねらって欧米よりも近隣のアジアにマーケットを広げようとしているが、政治問題がからんでおり、「われわれ業界ができることではございません」と、アジア各国との関係改善を求めた。
中小企業の成長戦略を真剣に考えてもらいたいが、なかなか前に進んでいない。米国の富裕層はメード・イン・チャイナには飽きたという声を聞き、とくに経産省には、メード・イン・ツバメ、メード・イン・ジャパンと、ジャパンブランドを後押ししてほしいと求めた。
懇談会は非公開で、閉会後に西村副大臣が取材に答えた。西村副大臣は、全体としては景況感はまだ良くなっていない一方で雰囲気は変わりつつあり、アベノミクスに対する期待感は大きいものがある。安定的な政治、長期的な政権を担ってほしいという期待も受けた。
20兆円規模の経済対策の予算が出ていくので、大手企業で増産するところも出てくるので、この夏くらいには地方でも効果が出てくる。
とくに話があったのは、来年の消費税増税は転嫁をしっかりできるようにしてほしいということ。中小企業にしわ寄せがいかないように相談窓口の開設や公取の監視、外税の表示をしっかりやってほしいと言われた。
設備投資に大胆な償却制度を求める意見があり、「その点は産業競争力会議で議論しており、成長戦略に一定の方向で入れていこうと思っている」。年末の党税調で議論して決めるのが長年のルールだが、「それを乗り越えることができるかどうか、これから議論しなければならない」が、日銀が大胆な金融緩和をやっており、政府も「大胆な政策を、成長戦略を打ち出して実行したい」。もう2週間くらいで政府は成長戦略を取りまとめるが、「きょうの意見をしっかりとわれわれのなかで受け止めて議論したい」。
ほかに中小企業向けに使えるような仕組み、新卒者の採用、海外展開、省エネへの対応などいくつか支援の要請もった。これだけの産業の集積、伝統のある所であり、「こうした集積をしっかり将来に向けて生かしていけるように応援をしていきたい」と話した。