スマートウエルネスシティ総合特区に指定されている見附市と三条市は1日、それぞれ全国健康保険協会(協会けんぽ)新潟支部と事業連携に関する基本協定を結んだ。協会けんぽ加入者の健診データなどの共有を柱に健康増進を目的としたもので、協会けんぽと県との間での協定はあるが、市町村と協定を結んだの全国でも初めて。
午前11時半から見附市役所で調印式を行い、見附市の久住時男市長、三条市の国定勇人市長、協会けんぽ新潟支部の中村幸雄支部長が出席して協定書に調印した。
スマートウエルネスシティは、健幸長寿社会を創造するため、歩いて暮らすまちづくりを基本に先進予防型社会を目指している。そのためには住民の健康データを蓄積、分析して施策に反映させる健幸クラウドが開発されており、翌2日に中央で開かれる成果発表会にSWC総合特区の会長市として久住市長も出席する。
しかし、これまで自治体が利用できるデータは全住民の4分の1ていどの国民健康保険のデータしかなく、しかも現役世代のデータ数が少ない。
一方、協会けんぽは、加入者のほとんどが健康保険組合のない中小企業の従業員や家族。協会けんぽの加入者は住民の3分の1を占め、この健診データを共有して健康増進施策の推進に生かせる意義は大きい。
協会けんぽにとっては、保険料上昇の抑制のために、自治体との事業連携や共同事業の実施の必要性が高まっていることから、事業連携。具体的には特定健康診査とがん検診の受診促進、医療費適正化のためにジェネリック医薬品使用促進セミナーなどの開催、医療費分析と特定健康審査結果の分析などを行う。
調印後、久住市長は、見附市民の健康に関する基本的なデータは人口の3割の国保データしかなく「7割の方々の健康データをわれわれが知る立場にない、しかし施策を行う矛盾があった」と背景を話した。協会けんぽの健診のデータ共有は「日本では縦割りで夢物語だった」が、2年前に中村支部長とこの壁を乗り越えようと話し、7市がSWC総合特区の指定を受け、規制緩和により健幸クラウドで健康情報を一元的に入手できるものにチャレンジし、認可してもらったと、かかわった多くの人たちに感謝した。
国定市長は一見、地味な協定だが、画期的で革命的であり、「この協定のもつ重みは極めて意義が深く、先駆的」とした。旧郵政省でICTに取り組むなかで、いちばんの阻害要因は「個人情報保護法を楯に取った過剰なまでの情報保護統制」で、医療、福祉分野ではどんなに年月を割いてもこの障壁を取り除くのは無理だと思っていただけに、恒常的な協定が結ばれたのは「本当に感慨深い」。
一人ひとりの幸せを追求するにはマクロな分析が必要で、必ずしもプライバシーの保護とは矛盾しない。SMC推進は、独りよがりの一方的な健康施策ではなく、その効果を客観的な指標で分析でき、「客観的なデータを蓄積をし、解析をし、それを踏まえてさらなる健康施策の充実を進めていくという意味での、いいサイクルをつくりだしていくための非常に重要なツールを得た」、「新潟支部の例を見ない大英断に報いるためにも、見附市さんともども、わたしどもも一生懸命に取り組んでいく必要がある」とした。
中村支部長は、全国3,500万人、新潟支部で80万人と国民、県民の3分の1が加入。一方で加入企業の4分の3が従業員10人未満の中小企業が多い構成で、被用者保険の最後の受け皿としての役割を担っている。
「住民の皆さまの健康と密接なかかわりをもつ自治体さまとの連携、協力は最も重視して取り組んでいる」「締結により」個人で行っていた健康づくりや疾病の重症化予防対策に保険者の垣根を越えて連携して取り組むことで、「これらの事業をこれまで以上に効果的、かつ的確なものにでき」、医療、健診データの情報を自治体と共有し、「地域全体の実態を把握した対策につなげていくことで、加入者の皆さまや地域全体の健康増進に寄与できる」と述べた。