燕市教育委員会は9日、成人講座「つばめ目耕塾(もっこうじゅく)」をスタート。皮切りは上原洋一教育長が小学校4年生の国語の教科書に掲載されている絵本「ごんぎつね」を使ったスペシャル授業を行った。
午前10時から燕市中央公民館で開き、60歳以上を中心に37人が受講した。「ごんぎつね」の挿し絵は、先に燕市が発行した「つばめっ子かるた」で絵札の原画を描いた絵本作家、黒井健さんの代表作。すべての国語の教科書に掲載されいている。
講座を進め方は上原教育長にお任せ。講座の受講は登録制ではないが、今年度の1回目の講座ということで、受講者から2人ずつペアになって座ってもらい、互いに自己紹介などを行ってリラックスしてから本題に移った。
「ごんぎつね」が初めて小学校の国語の教科書に載ったのは、昭和31年(1956)。同40年以降から国語の定番になり、初登場から半世紀以上たった今も5社の国語の教科書すべてが「ごんぎつね」を収録している。
そのため60歳以上の人は小学校の教科書に「ごんぎつね」がなかった世代だが、それでも3分の1ほどは「ごんぎつね」を読んだことがある人だった。
高校で国語を教えた上原教育長。「ごんぎつね」を最初から最後まで一気に朗読すると、「小学生と同じような言語活動をやってみます」、「小学校4年生の教室と思ってください」と童心に返るよう求め、受講者から文章の気になった部分をチェックし、感想を書いてもらったあと、ペアになった受講者同士で感想を話し合ってもらった。
さらに全員の前で感想発表をしたい人に手を上げるよう求めると、ひとりも手が上がらず、上原教育長は「小学校4年生だと全員が手を上げんですが」と笑わせた。
受講者の感想は、兵十(ひょうじゅう)とごんぎつねの悲しい結末に「どうして仲良く暮らすようにならなかったのか残念」、「いくらいいことをしても言わないことには誰にも通じない」、「ごんぎつねは兵十と仲良くなりたかったと思う」とさまざまなポイントに注目していた。
小学校1年生のときに読んだことがある男性は、「当時はおとなにはわからない」部分があるという感じを受けたが、あらためて読んで逆に「子どもではわからないといこともあるとわかった」と自分が変化することで気付きや感想が変わることを実感していた。
上原教育長は、「ごんぎつね」は6つの段からなるが、5段目までごんぎつねの視点で描かれているのに、6段目で客観的な描写になっていることにも注目するよう求めた。小学校では、「ごんぎつね」を読んだあとに、同じものを読んでも感じ方が違うことを知る学習をすると言う。「知っていることや経験を結びつけて読むので、感じ方も十人十色になる」と言い、そこに教科書に採用されてから50年以上、いまだに採用され続けている「ごんぎつね」の魅力があることも紹介した。
上原教育長は今春、県立糸魚川白嶺高校校長から燕市教育長に就任。教頭だった平成16年に国語を教えたのを最後に9年間、教壇に立っていないが、感想を考える受講生の机の間を歩く上原教育長の雰囲気は、まさに先生。「緊張しましたし、懐かしさも感じました」と上原教育長はほっとしていた。
つばめ目耕塾は、主に高齢者を対象に毎年、燕、吉田、分水の3会場で文化や生活に関連した講座を行っている。ことしは11月12日まで12回開く。参加は無料で登録の必要がなく、参加したい人は開催日に直接、会場へ出向く。詳しくは燕市総合文化センター内の燕市教委生涯学習課公民館係(電話:0256-63-7001)へ。