県と県警本部は9日、燕市立燕北中学校(永井宏校長・生徒196人)で「命の大切さを学ぶ教室」を開き、県内で起きた傷害致死事件で子どもを亡くした女性の講演を全校生徒で聞いた。
はじめに県警察本部犯罪被害者支援室が被害者の現状と支援活動について話してから女性の講演を聞いた。テーマは「十六歳の命」。
女性は、子どもが暴行を受けたと聞いて病院へ向かい、亡くなるまでのようすを時々、あふれる涙をこらえ、声を詰まらせながら、具体的に話した。
真実はわからないが、金銭的なトラブルを理由に、友だちになぐられたり、けられたりの暴行を受けた。「この苦しみは経験したことのないもの」で、暴行した友だちが悪いとわかっていても、なぜ子どもの変化に気付かなかったのか、育て方が悪かったのかと「自分を責め続ける毎日だった」。
さらに女性を苦しめたのは、テレビや新聞の報道。被害者は名前をおろか、親も許可していないのに顔写真まで出たが、「加害者は未成年ということでだけで名前すら出なかった」。周囲の心ないうわさ話も追い打ちをかけた。
女性は精神的に追い詰められて、事件から何年もたった今も薬とカウンセリングによる治療を受けている。「加害者の顔を見るのは憎しみや悔しさ、わたし自身、事件当時の気持ちを思いだして本当に、本当につらいことだった」。加害者には「できることなら(自分の子どもと)同じ思いをさせたい」、「こんな思いを抱いていることを知ってもらいたい」と訴えた。
そして目の前の中学生に「自分がされて嫌なことは人に絶対しない」、「相手のいたみのわかる人になってほしい」、「相談することの大切さをもう一度、考えてください」、「いじめを苦に自殺なんて絶対にしないでください」と願い、「親は本当に自分のことをかわいく思って、大切にしていることをわかってほしい」と親の思いへの理解を求めた。
最後に「これから先、被害者にも加害者にもならないよう、自分の行動に責任をもち、生きてほしいこと。家族とのきずなをどうか大切にしてこれからの人生を歩んで言ってください」と締めくくった。
猛暑で会場の体育館はじっとしていても汗が噴き出す蒸し暑さだったが、生徒は静かに女性の話に聞き入り、女性が声を詰まらせると顔を上げて女性を見詰め、突き刺すような母親のつらさやいたみを肌で感じていた。続く授業で講演の内容について各学級で話し合った。
この教室は、中学生や高校生から、犯罪被害者の親の思いや生命の大切さへの理解を深めてもらい、被害者を思いやる意識を育て、規範意識を向上させて安全で安心して暮らせる社会を実現するのを目的に開いている。
県警が平成21年度から始め、23年度から県とともに主催し、県内の中学、高校からの依頼を受けて開いている。今回は今年度6回目で、燕市内では先に分水高校でも開いていて今年度2回目。