燕市産業史料館では、5日から21日まで深澤索一版画展を開いており、燕市吉田地区出身で大正時代に活躍した深澤索一(1896-1947)の木版画33点を県立近代美術館から借りて展示している。
索一の作品は大正時代中心の西洋美術受容期、それから昭和初期の展開期、それ以降の東洋的表現の3つの作風に分けられると言われる。会場では古い作品から時計回りに時代を追って順に展示している。
なかでも目を引くのは大正12年(1923)の関東大震災の後、被災から復興へ向かう東京の姿をとらえた連作「新東京百景」で、昭和4年(1929)から6年(1931)にかけて制作された8点を展示する。
ハイカラな四角い建物に英語の看板がレトロで郷愁を誘う「昭和通ガソリンや」をはじめ、「芝増上寺」、「柳ばし」、「築地」、「言問橋」など震災の痛手から立ち上がった東京の町を描写し、それはまるで未来の繁栄への祈りを込めているようにも見える。昔の文芸誌などに多く見られた版画の表紙絵を知る人には、懐かしく鑑賞できるはずだ。
索一は西蒲原郡吉田町(現燕市)に生まれ、同郡巻町(現新潟市西蒲区)で育った後、20代前半から諏訪兼紀の指導で版画制作を始めた。日本創作協会展や春陽会展などに出品。吉行エイスケ主宰のダダ誌『賣恥醜文』創刊号(1924年4月)の表紙を飾ったのは有名だ。
しかし、地元では索一のことはほとんど知られておらず、旧吉田町のどこで生まれたかさえ定かではなく、索一に関する資料もほとんど残されていない。この機会に地元の人たちからも索一の業績にふれてもらい、索一に関する情報も寄せられればと期待している。
午前9時から午後4時半まで開館、今後の会期中の休館日は13日。入館料はおとな300円、子ども100円で、土、日曜と祝日は、燕市内の小中学生と付き添いの保護者1人が無料。問い合わせは同史料館(電話:0256-63-7666、メール:sangyoshiryokan@city.tsubame.niigata.jp)へ。