三条市が10月に工場見学を中心としたイベント「燕三条 工場(こうば)の祭典」を行うのに先駆けて、1日から3日まで「プレ工場の祭典」を行っており、東京芸術大学から学生や教授27人が参加して「工場の祭典」に参加する工場の一部、15社を見学している。
参加者は芸大美術学部デザイン科3、4年生12人と美術研究科デザイン専攻・演出研究室と同設計研究室の修士1、2年12人、それに教授など3人の27人。プロダクトデザイン、ディスプレー、オブジェなど三次元にかかわる制作を行うゼミの大学生、大学院生で、1、2の2日間は燕三条地域の15社を見学し、3日の予定はフリー。
三代目日野浦司さん(57)と四代目睦さん(32)の2人で伝統の鍛冶の技を継承し、さらに高みを目指して鉈(なた)を製造する日野浦刃物工房=三条市塚野目=には6人が見学に訪れた。
睦さんは、鋼付けから完成品まで一貫した刃物造りを説明し、実際にその工程を実演してみせた。真っ赤にした鉄に鋼を載せてたたいて接合させる鍛接作業は、金属をたたく大きな音とともに四方に火花が飛び散り、「すごいね」、「圧巻だね」と目を丸くしていた。
睦さんは鉄の色や水のはじき方で温度がわかることを話し、鋼は硬いので“焼き戻し”という作業をしないと「だめな刃物になる」と説明。すかさず学生は「だめな刃物とは?」と質問すると「硬いだけでは簡単に刃こぼれしてしまう」といった具合に、学生の率直な疑問に答えを返していた。
途中から司さんもガイド役に加わり、これまで見てきた世界の刃物産地の実情を話すとともに、「鍛冶の刃物を作る技術は日本が世界一と思う」と自信を示した。
その学生のようすを見に訪れた国定勇人市長は「心の底から初めて見る喜びを表し、刺激を受けている」、「あの反応を見ると誇りを感じる」、「元々、ものづくりに関心の高い人だから反応がいい」と手応えを感じていた。
「工場の祭典」は、経済部の商工課が担当となって進めているが、今回の「プレ工場の祭典」は地域経営課が主導した。地域経営課は今年度、大学と連携した取り組みを模索するなかで、「工場の祭典」を生かした企画をと芸大との連携を思いついた。
三条の道具を教育の現場で使ってもらえるのでは、あるいは企業と一緒に商品開発がうまれるのではといった化学反応にも期待する。
10月の「工場の祭典」に自主的に参加する学生もあるだろうが、今回の企画はこれでいったん終わり。芸大で今回の企画の感想を聞くなどしてフィードバックし、その後の新し取り組みを検討していく。