10月の「燕三条 工場の祭典」を前に芸大の学生ら27人が参加して1日から3日まで行われている「プレ工場の祭典」の企業と学生の意見交換交流会が1日夜、三条市・餞心亭おゝ乃で開かれた。
参加者は芸大美術学部デザイン科3、4年生12人と美術研究科デザイン専攻・演出研究室と同設計研究室の修士1、2年12人、それに教授など3人の27人。1、2日は燕三条地域の15社を見学した。
あいさつで国定勇人市長は、燕三条がものづくりの町であり続けるには、ものづくりのにおいが、雰囲気がいつも漂っていなければならないが、実際にはそれがほとんどなく、「子どもたちに伝えきれないものづくりの誇りというものでしか過ぎないのであれば、それが地域外、県外へは到底、届くわけもない」と憂えた。
ものづくりまちを自分たちでほめ合ってもしようがなく、「県外の若者たちを通じてこの燕三条地域の良さを自らの言葉で、自らの作品で伝えていっていただくことができれば、これは燕三条地域にとって持続可能な有力な武器を手に入れることになる」、「ひとつひとつの会社を見ていただくことは、これから先の燕三条地域にとって大いなる一里塚になるんだろう」と期待し、これから先、東京芸術大学と燕三条地域が永遠につながっていく「第一歩になり」、来年以降も交流が深まることを願った。
斉藤弘文三条商工会議所会頭は、燕三条地域はあらゆる金属加工の集積したまちであるアピールし、「ものづくりの現場のしっかりと目に焼き付けて帰ってほしい」と求めるとともに、こうして新しい第一歩を踏み出した芸大に感謝した。
芸大の尾登誠一教授は、芸大生の特徴を表現力や造形力はほかの学校に負けないが、「発想力が、スケールが小さい」とする一方、この日、工場見学した諏訪田製作所の黒で統一された社屋に、過去に見学したイタリア・ミラノの企業にも負けない哲学をもっているのではないかと驚いた。
工場見学で考えていたのは、職員が何十年もかけて作ったものには「製品のなかに時間軸が入っている」こと。流行が変わるのがデザインと思われがちだが、「腰を据えて時間をデザインする」、「製品のなかに明確に時間軸を入れるのは非常に重要なこと」と30年ぶりに訪れた燕三条地域の感想を話した。
1日目の見学を終わってからの交流会で、会場内には地元20社余りのぞれぞれコーナーを設け、一言PRタイムで各社1分の持ち時間で自社をPRしてから交流した。PRが始まると学生はその場で話を聞くと思われたが、製品を間近に見たいのでそれぞれのコーナーの前を囲み、次のコーナーへと移動した。
その後は自由に交流してもらったが、あちこちで企業と学生が歓談し、学生はこの日、見聞きした疑問を直接、経営者にぶつけ、意欲の高さを象徴していた。中には見学先で包丁を3本も買った学生もいた。
交流会の直前に学生は国定市長を表敬。そのなかで「東京で見るときはかっこいい造形物っていうものだけが売られているような気がしていて、バックにある濃密な世界観を紹介したいなとすごく思いました」と話す学生に国定市長は「うれしいね〜。ぼくらの悩みがまさにそこなの」と我が意を得たりで、「ストーリーが透けて見えるようなところまでもっていけるようになるといいね、というのは今の課題です」と話していた。