「ジェットエンジンの製造現場を見に行こう」と燕市は7月24日、つばめ未来産業見学会を開き、20人が日帰りで上京して宇宙航空・エネルギー機器、建機など総合重機メーカー、株式会社IHIの瑞穂工場とそらの未来館を訪れた。
燕市内の製造業の経営者など9人のほか、新潟大学産学地域連携推進機構などから20人が参加した。はじめにIHI昭島事業所に併設のそらの未来館を見学。担当者から日本初のジェットエンジン開発をはじめ、同社の歴史と技術について聞いた。
前身の旧石川島重工業は第二次大戦中、ほとんど何もない状態から約4年でジェットエンジンを開発し、終戦直前に初飛行に成功したという。展示物を見学しながらエンジンの構造と仕組みを学んだあと、瑞穂工場を見学した。
瑞穂工場では、エンジンのアセンブリー(組み立て)を行っており、実際に作業しているすぐ横で、説明を聞いた。技術内容はもちろん、TAT(turn around time)の短縮、改善提案による効率向上と作業ミスの低減、マイスター制による技術の伝承など、規模の違いこそあれ、ものづくりの現場で役に立つ、学ぶべきことが多かった。
先に燕市が開いた第1回つばめ未来産業セミナーで講師を務めたIHI航空宇宙事業本部生産センターの落合宏行主任調査役は、セラミックスと金属の両方の皮膜を生成できる「MSCoating(Micro Spark Coating)」という技術を工場内でデモも行って紹介した。
コーティングする材料を電極とし、母材とともに絶縁油の中にいれて電圧をかけると、電極材料が母材に移動し、互いの材料が溶融し接合されるというもの。熱収縮や歪が小さく、剥離もなく、マスキングの必要もないため、溶接やめっきに変わる技術と話した。
燕市の企業にも参考になるアプリケーションとして、切れ味が落ちない包丁を紹介した。包丁は刃道が鋸状でギザギザであることが切れ味に関わっており、切れないのは刃先のギザギザがなくなり、丸まって平坦になるから。開発した包丁は片側だけMSCoatingの技術を使って、超硬質粒子をステンレス表面に融合させており、使い続けても柔らかい部分は摩耗するが、硬質の部分が残り、ギザギザを維持し、自己再生する画期的だ。
地元から参加した人たちは、最先端といえるIHIのものづくりの現場を目の当たりにできる貴重な機会である一方、そこで得た情報をそれぞれの企業の現場でどう生かせるかも考えながら熱心に見学していた。