「はだしのゲン」がにわかに注目されて少々、驚いている。漫画家の中沢啓治が自身の被爆体験を元に1972年から少年漫画雑誌に連載した漫画だ。リアルタイムで作品を目にした記憶があるが、全編は読んでいないと思う。ストーリーもほとんど記憶にないが、すさまじい描写のイメージだけが漠然と残っている。
何十年ぶりかにそのイメージを甦らせてくれたのが、三条市・みんなのまちの交流施設「みんくる」のチャレンジショップに7月下旬から出店している「SOYL cafe」。自前で店内にDJブースを設け、そこに店主の小林正樹さん(35)が、こだわりの書籍を並べている。その書棚の中に「はだしのゲン」を見つけた。
店で出しているメニューはオーガニックを強く意識しており、エコや環境問題に対する強い関心をもつ。「はだしのゲン」も、子どもたちから原爆の悲惨さを知ってもらいたいと、店内で読んでもらえるようにと、わざわざ全10巻を購入した。「はだしのゲン」が全巻、読める珍しいカフェ、という形で8月6日の広島、9日の長崎への原爆が投下された日を前に記事で紹介しようかと思いながら、ずるずる書かないでいるうちに9日、燕市が広島の平和記念式典に中学生を派遣した事業の報告会が開かれた。
派遣された中学生5人が報告、鈴木力市長と歓談したなかで、鈴木市長は中学生に「はだしのゲン」を読んだことがあるかと聞いた。思いがけず再び「はだしのゲン」が話題になったことで、そのことも含めて記事に書こうと思っているうちに、今度は松江市教委が「はだしのゲン」が過激な暴力描写を理由に市立小中学校の図書館での閲覧の制限を求めたことが大きなニュースになっている。
連載開始から40年もたって、久しぶりに「はだしのゲン」を思い出したと思ったら、こんな大きなニュースになってびっくりだ。松江市教委の判断については、なんとく過敏なのではと思うが、何しろ記憶がほとんどないので、態度を明確にはできない。いずれにしろ今回のニュースで「はだしのゲン」に興味をもった人は、「SOYL cafe」でゆったりくつろぎなら熟読できる。もっともくつろげずに眉間にしわが寄ってきそうな気もするが。ともかく、ようやくこうして記事にできて良かった。