燕市立吉田小学校(海藤英紀校長)の新校舎図書室に創立140周年を記念して設置される壁画の最後の仕上げが29、30の2日間、行われている。原画を描いた壁画家、松井エイコさんが立ち会い、作業のようすは児童にも公開している。
29日は同校の2学期の始業式で、松井さんは児童の前であいさつした。「どんなふうに作っているのかを知ってほしくて」と、松井さんはこれまでの制作のプロセスを説明。壁画に描かれた4人は「吉田小学校にいるみんなが一人ひとり輝いてほしい、そして幸せになってほしい、そんな気持ちを込めて絵をつくっていきました」と述べ、「壁に張ってできあがっていくところみんなから見てもらえて、とてもうれしい」と言い、作業の見学を歓迎した。
松井さんは1957年東京生まれで、武蔵野美術大学油絵科を卒業。公共施設を中心に、これまで約140点にのぼる壁画を手掛けている。3年前の燕市内での講演、さらに昨年6月の吉田小創立140周年記念の講演会でも講師を務めたのがきっかけで、同校創立140周年記念事業実行委員会(霜鳥徳弘実行委員長)が松井さんに壁画制作を依頼した。
県内では、1990年ころに新潟市・中之口西小学校、長岡市・与板中学校の2カ所で彩色画の壁画を制作しているが、今回はガラスモザイク。制作は20年以上の付き合いになる造形工房mosaica=神奈川県横浜市=の主匠、薄井政俊さんと取り組んだ。作品のタイトルは「一人ひとりの輝きを」。
図書室には、本来の壁の前に緩やかに弧を描く木製の壁を設置し、それがカンバス。高さ2.8メートル、横12.2メートルと巨大で、その壁を水平に3分割し、上下はふじ色の1色のタイルを張り、実質的な作品はその間の幅1メートル×12.2メートルの部分。同校での取り付け作業は10日前の19日から始め、これまでに上下の部分のタイルを張り、29、30の2日間で一気に真ん中の作品の部分を完成させる。
ふじ色の部分は、約2センチ四方の均質な色と形のタイルなので、建築物に使われているものと同じイメージだが、作品部分のタイルはまったく異なる。四角形が基本だが、正方形だけでなく長方形もあり、表面に凹凸や金属を溶かし込んだ模様のあるものも。松井さんが原画で切り絵で表現した色が、ガラスモザイクの多様な色や形で再構成され、原画にはなかった“部分”での表現が作品に深みを加える。
松井さんが最も大切にしているのが、線。薄井さんのアトリエでは床に置いて制作したが、壁に張るとあらためて気付くことがあり、その場でタイルを切って修正を加えていた。
午前10時過ぎから6年生はクラスごとに見学したが、先生も児童も「すごーい!」、「きれい!」と想像を超えた芸術性やスケールの大きさに声を上げて驚き、目を輝かせて見入っていた。
松井さんは子どもたちの質問に答え、壁画に使われたタイルの数は計算すると少なくとも約3万枚。作品を見てどう思ってほしいかという質問には、「この壁画を見た人が、きれいだなとか、幸せな気持ちだなと感じて見てほしい」、「絵の中の4人が何をしているんだろうかと想像して見てもらえたらうれしい」と話していた。