三条市とほぼ同じ人口10万人のドイツの都市、エアランゲンに在むジャーナリスト高松平藏さんを講師にスマートウエルネス三条推進講演会「ドイツの地方都市はなぜ元気なのか」が28日、三条市役所で開かれ、市職員を中心に60人余りが聴講してエランゲン市の元気の源泉を学んだ。
高松さんはそこに暮らしながら、ドイツの社会、文化を取材し、発信している。ドイツは自動車大国だが、エアランゲンは環境や健康への配慮から歩いて暮らすまちづくりを行っている。高松さんは、ドイツはそもそも国の成り立ちが地方分権なので「地方都市という言葉がない」とまちの成り立ちの違いから話した。
人口10万人は大規模都市で、1970年代から歩行者ゾーン化を進め、市街地の道路を歩行者のために取り戻した。「大事なのは何が道に付随しているか」で、ドイツは元々コンパクトシティー化していて求心力があり、イタリアへのあこがれもあってカフェが多い。法律で店舗の日曜営業は禁止されている。年2回の祭りがある。
国際コミックサロン、国際フィギュア・フェスティバル、詩人の祭典といった外から人を呼び込む大きなイベントがある。広場は人が滞留する空間として機能している。
そして注目なのが、オープンドア・イベント「科学の夜長」。近隣3都市の大学、研究機関、企業など400戸以上が門戸を開いて内部を公開し、12ユーロのチケットでどこでも入れる。1年おきに開かれ、動員数は初回03年の1万2千人が11年には2万8千人に増えている。
消防署や農業、病院、発電所なども公開し、堅苦しいものばかりではなく、野菜にレーザーで模様を描いたり、内視鏡手術のロボットでゲームをしたり、医療コメディの上演も行われる。オープンドア・イベントの価値はマーケティング、地域コミュニケーション、情報開示・説明、教育などがあり、「科学の夜長」では、さらに地域の資源の可視化、地域イメージの創出などがある。
日本のNPOのようなフェラインと呼ばれる組織がドイツ全国で60万もあり、エアランゲンだけでも550もある。三条市のNPOの数を問うと「14」だった。ただ、NPOに参加するには、可処分時間が必要で、三条市のように職場と家が近い環境にはそれがある。さらにマトリックスで市街地の価値をわかりやすく見せた
一般には興味をもちにくい内容だったが、エアランゲンの歩行者ゾーンは三条市が導入しようとする「ゾーン30」やスマートウエルネスと重なり、オープンドア・イベントはこの秋に開く「燕三条 工場の祭典」のモデルケースと言える。受講者の大半を占めた市職員にとっては、これから事業に取り組むうえで学ぶべきことが多かった。質疑では、広場にはどういう世代が集まっているのか、写真ではごみがないように見えるのはなぜか、オープンドア・イベントの情報を市民がどうやって知るか、歩行者ゾーンの導入による商店への影響など、次々と手が上がった。
冒頭、人口規模からして「エアランゲンにできてわれわれ三条市にできないことはない」と言った国定勇人市長。市民がまちの真ん中に来る手段について聞くと高松さんは、地下に大きな駐車場があり、パーク・アンド・ライドが実現していると説明。また、市街地からそう遠くないところに大型店もあり、昔ながらの店と共存し、古い建物でもその中で営業する店は変わり、街並みは変わらないようでもサービスは変化していることも紹介していた。