新潟市出身の現代アート作家、渡辺トシフミさんが燕市産業史料館で4年ぶり2回目の作品展「渡邊トシフミ NEW WORKS」 (2013.9.7)

新潟市出身の現代アート作家、渡辺トシフミさん(28)＝東京都国分寺市＝の燕市産業史料館で4年ぶり2回目となる作品展「渡邊トシフミ NEW WORKS」が6日から23日まで開かれており、身近にあるものを使った現代アート作品が並んでいる。

23日まで「渡邊トシフミ NEW WORKS」が開かれている燕市産業史料館で現代アート作家の渡辺トシフミさん

日本大学芸術学部美術学科彫刻コースを卒業し、大学院へも進んだ。2003年、大学進学前に高校の友だちと最後のご飯を食べたが、何かが終わる気がして飲めなかった缶入り清涼飲料水の「2003年清涼飲料水」。同じ年に大学1年の夏休みのアトリエを撮影した写真「原風景」。それ以外は2010年以降の作品で、あわせて16点を展示している。

ケースに入れる作品を中心に構成。現代アートになじみのない人の来場も多いと想定。A3判の両面にびっしりと印刷した各作品の解説文を配布しており、解説文を読みながら作品を鑑賞してもらおうという趣向だ。

漫画コミックの第1巻と最終巻を並べた「始まりと終わりの間にある物語」

展示したなかで最も思い入れある作品が「始まりと終わりの間にある物語」。40余りの漫画コミックを背表紙が見えるようにして第1巻を左に、間を置いてその最終巻を右に並べた作品だ。

両者の間にある時間を人生にもなぞらえ、始まりがあれば終わりがある。今、人生の何巻目にいるのか、さまざまな理由で長く続いた漫画もあれば、短く終わった漫画もある。巻を追うにつれて絵も、作風も変わってくる。それを人生に重ね、解説文では「はたしてどんな物語が待っているのでしょうか。またその物語の終わりに何が待ち受けているのでしょうか。」と締めくくっている。

U字マグネットをたくさんくっつけた「磁石」

約100個ものU字型の磁石をN極とS極を逆にしてくっつけた「磁石」、ガラスの灰皿を上下に重ねただけで造形作品のように見える「シンメトリー」、プラレールの新幹線車両を置いただけの、上京や旅行、あの時、あの場所などを想起させる「新幹線」、今まで出会ってきた人をイメージして描いた「ドローイング集」、楽器のトライアングルをいくつもひっかけて下げただけの「トライアングル」。

さらに展示室のわきにあるふだんは閉ざした通路を開け、その奥に渡邊さんが日常で気になったものを撮影した30枚の写真をスライドショーで上映する空間を生かした「徒然」、さらに学生時代の自分自身を題材にした記録ドキュメンタリーも上映している。

ウイスキーの空き瓶に吸い殻を詰めた「酒とたばこ」

ほかにもミニ四駆、ウイスキーの空き瓶とたばこの吸い殻、積み木細工のように積み上げた消しゴム、市販の玩具を乱雑に並べたものなど、身近にあるもので構成する作品が多い。

「自己欲求も大事だけど、少しでも僕の気持ちを伝えたい」と渡辺さん。現代アートに接する窓口を広げ、取っつきやすいようにとあえて身近なものを選んだ。「楽しんでもらってから、コンセプトをくみ取ってもらったり、きれいだねとかいう段階まで楽しんでもらえればいい」と言う。

東京と新潟を中心に個展やグループ展、パフォーマンスなどを行っているが、まだこれからの若手。「東京で活躍できるように日々、もがいている」と笑う。さまざまな理由でアートの道をあきらめていく作家仲間もいるが、「僕はやめません」ときっぱり。

カラフルな消しゴムを積み重ねた「色を積み重ねる、崩れる」

4年前の同史料館での作品展は、金属加工産地という燕市で受け入れられるものをと、鉄の彫刻作品を展示したが、今回は現代アートにしぼった。わかってもらいにくいだろうが、「見てくれる人の反応が楽しみ。作品の意味を考えながら楽しんでもらえればいいと思う」と話している。

16日午後2時からアーティストトーク「制作と生活」を行い、渡辺さんと同史料館学芸員による対談を行う。申し込み不要で無料だが、入館料は必要。

会期中の休館日は9日と17日、午前9時から午後4時半まで開館。土、日曜と祝日は、ミュージアムパスポート持参で燕市内の小中学生とその付き添いの保護者1人が入館料無料になる。