真宗大谷派三条別院=三条市本町2=は、2015年5月の宗祖親鸞の七百五十回遠忌法要を告げる駒札を1年前に参道に立てる。その駒札を鎚起銅器の老舗、玉川堂=燕市中央通り2=が鎚起の技術で作り、さらに駒札の題字はダウン症の書家、金沢翔子さん(28)が揮毫(きごう)するという、世界初の鎚起駒札を制作するコラボレーションのプロジェクトがスタート。それに先だって11月1日午後1時から三条別院で金沢翔子さんによる席上揮毫と母泰子さんを講師に講演会が開かれる。
駒札の題字は、七百五十回遠忌法要を告げる内容ですでに決まっており、席上揮毫は金沢翔子さんが好きな言葉を選んで揮毫パフォーマンスを行う。金沢翔子さんは東京生まれで、NHK大河ドラマ「平清盛」の題字を揮毫。仏教の縁も深く、人の喜ぶ姿を思って魂と心で筆を持つという。
講演会では子育て世帯の親を対象に開く。講師の泰子さんは、ダウン症の娘を育てた経験を通じての苦労や喜び、地位や金や学歴など世俗的価値にしばられがちなわれわれに、自身の子育ての経験から得た価値観、人生の深みについて聴く。入場無料。
印刷技術が普及するまで、広報するためにひと目をひく所に文字を書いた板の札「高札(こうさつ)」を掲げた。将棋の駒の形になったものを「駒札」と呼ぶ。
玉川堂が製作する駒札の大きさは、縦170センチ、幅110センチ。金沢翔子さんが揮毫する題字をも元に、職人が銅の板を一打一打、心を込めて筆圧や筆のすれ具合まで精密に再現してたたき上げる。
これまで駒札は参道から三条別院の境内へ入る直前、門の前に立てていたが、一般の人の目にふれにくいため、本寺小路を歩く人からも見えるように参道のいちばん手前に設置する。すでにベニヤ板でダミーの設置も試している。
金沢翔子さんには、講演会にあわせて三条別院以外にも玉川堂や燕市、三条市を見てもらい、燕三条地域を肌で感じてもったものもを題字に込めて揮毫してもらう。14年初めにも関係者で鎚起駒札の鎚起駒札の打ち始め式を行って玉川堂が制作を始め、5月に立柱式を行って掲示する。
三条別院では、50年に1度の節目の親鸞の七百五十回遠忌法要を待ち受けるイベントとして、金物のまち三条にちなみ、金属製品で駒札が作れないかと考えた。たどり着いたのが、人間国宝となった玉川宣夫さんも働く玉川堂。玉川堂は燕市にあるが、三条にこだわらず、広くツバメ三条地域でと感がえた。玉川基行社長が真宗大谷派の寺院で総代を務めていることを知り、だめでもともとと寺の住職を通じて依頼したところ、快く受けてくれた。
題字を揮毫してもらう書家も検討するなかで、金沢翔子さんは奈良の東大寺にも書を奉納するなど仏教との縁が深いこともあり、だめもとで問い合わせたところ、引き受けてもらえることになった。まるで、ひょうたんから“駒札”のごとく、当初の計画をはるかに超える立派な駒札が完成することになった。
三条別院、玉川堂、金沢翔子さんの3者のコラボレーションで生まれる鎚起駒札。三条別院に置かれる三条教務所の五辻広大さんは、「七百五十回遠忌法要に向けた皮切り、出発点として取り組んでいる」と鎚起銅器に込めた思いは大きい。「いろんな方面の方に燕三条をアピールできる」と“燕三条”にこだわる。「この地域は全国的には燕三条として広く知られているので、両市の良さと七百五十回遠忌を世界に発信できるようなものにしたい」と話している。