燕三条地域の54拠点にのぼる工場の扉を開けて現場で職人技の手の内を明かす「燕三条 工場(こうば)の祭典」が2日、開会した。会期は6日までの5日間で、週末の5、6日をピークに県外からも来場者を呼び込んで燕三条のものづくりをアピールする。
初日2日は午前9時から曽根忠幸実行委員長が代表取締役に就く庖丁工房タダフサ=三条市東本成寺=の工場の前で開会式を行った。工場の前には、工場の祭典のシンボルであるピンク色の斜めのストライプが飾り、曽根実行委員長の車もピンクのストライプに覆われた。
曽根実行委員長は「このように注目されるイベントになったということは、(準備期間の)この1年はむだではなかった」、「燕三条地域にとってもっともっと核となるイベントになることを期待する」とあいさつ。
国定勇人市長は、工場の祭典は「ものづくりにとっての大地の芸術祭だと思っている」とし、「できるだけ多く回っていただいて燕三条地域のもつ気高き,誇り高きものづくりの精神の一端にふれてほしい」と願った。
アドバイザーを務めた(株)メソッドの山田遊代表も加わって三条市・進光鋏製作所が手掛けた握りばさみを使ってテープカットのあと、「開け、ごま!」ならぬ「開け、工場!」のかけ声とともに工場のシャッターを開け、工場の祭典にふさわしい幕開きとなった。
さっそく同社の工場見学を行った。工場によって終日、開放しているところもあれば、予約制や時間制を設けたり、体験やワークショップを行ったりするところもある。同社は時間制の見学だけで、一番乗りは友だちを誘って2人で車を利用して日帰りで訪れた25歳の男性だった。
ウェブサイトで情報を見つけ「深い理由はないけど、おもしろそう」と来場した。仕事に就いておらず、「職人とふれる機会が少なく、自分もやってみたい、何か吸収できるのではと思って」と言い、「なんか力が抜けた感じがいい」と適度な“ユルさ”ににっこり。この後の見学先はタイムテーブルを見て決め、最後はスノーピーク本社を見て帰ると話していた。
続いて訪れたのは、写真歴15年の新潟市東区に住む写真愛好家の75歳の男性。「工場はなかなか入れる機会がないので、どんなものか見せてみらおうかと思って」。燕市の鎚起銅器の玉川堂や研磨作業を見たいと話していた。
参加工場をはじめ、市役所や燕三条の玄関口となるJR燕三条駅には工場の祭典のディスプレーで飾られた。燕三条駅内の燕三条駅観光物産センター「燕三条Wing」に開設した案内所には、午前だけで50人を超す人が訪れた。首都圏を中心に県外からの来場が多く、遠くは兵庫県三木市から訪れた人も。ウェブサイト「WIRED」で繰り返し工場の祭典に関する記事が掲載されたこともあり、そこで情報に接したデザイン関係の若い人が目立っていた。
開放する54の拠点は三条市内40、燕市内14。初日2日はうち29拠点が開放し、ピークは土曜の5日で42拠点が開放する。タブロイド判のパンフレットは「燕三条Wing」のほか、燕市産業史料館と三条鍛冶道場に設置している案内所で配布している。来場者見込みは2万人。