燕市は10日、燕三条地場産業振興センターで第4回つばめ未来産業セミナーを開き、東京大学大学院経済学研究科の藤本隆宏教授を講師に「燕の未来を支えるものづくり成長戦略」のテーマで講演を聞き、パネルディスカッションを行った。
地元の製造業者を中心に約80人が出席した。藤本さんは1955年東京生まれで、東京大学ものづくり経営研究センター長も務める。著書は『ものづくり成長戦略 「産・金・官・学」の地域連携が日本を変える』など数多い。8月29日から11月15日まで毎週開講の長岡ものづくりインストラクター養成スクールを開校している。
藤本教授は、現場力を高めること、需要を創造することを中心に講演。後半では、中国の人件費は日本の20分の1だったが、ここ数年で7分の1、8分の1になっており、自動車業界では5分の1にまでなっており、「そろそろ射程距離」とし、「日本ほどのペースで生産性は上がらない」と、低賃金を背景としたアジア諸国の製造業の躍進に日本の製造業は十分に対抗できるようになっているという見方を示した。
講演に続いてパネルディスカッションを行った。新潟大学経済学部の岸保行准教授をコーディネーターにパネリストとして藤本教授さんと、業務用器物の製造の株式会社イケダ代表取締役のの池田弘さん、スプリングバランサー・ホイストや丸ノコ切断機など製造の遠藤工業株式会社代表取締役の遠藤光緑さんを迎えて行った。
池田さんは、3,000万円の営業利益が出るはずが2,000万円しか出ていないため、調べると不良品率を改善しなかったことがわかり、それで含めるとぴたりと計算があった。自社製品を商社に売り歩いてもらったが、これからも「商社とのパイプを太くし、設計とものづくりに専念したい」とした。
遠藤さんは、「現場力を高めるのは人の育成」で、自分で考えるように働きかけることで不良品を減らすことができ、「自分で考えてやるから日本人」と、日本の製造業の強みを話した。
藤本教授は「働いている時間のなかで本当に価値を生んでいるのは5%、10%」しかなく、待ったり、歩いたりしている時間が大半を占め、本当に顧客のために働いている時間を30%に増やせば生産性を今の2倍、3倍に向上させられると、改善の余地は大きいとした。ただ、生産性が上がることによって人手が余り、その仕事を探すために経営者はつらくなるとも。
ほかにも池田さんは抗菌ステンレスを使った製品の製造を始めた1996年に学校給食でO157食中毒事件が発生して売り上げを伸ばしたことを紹介。遠藤さんは地元企業だけでなくインターネットを活用して世界の企業と積極的にコラボレーションしたい考えなどを話した。