三条別院が鎚起銅器の駒札の題字揮毫を依頼したダウン症の書家金沢翔子さんが席上揮毫のパフォーマンス (2013.11.1)

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真宗大谷派三条別院=三条市本町2=は、2015年5月の宗祖親鸞の七百五十回遠忌法要を告げる駒札を鎚起銅器の老舗、玉川堂=燕市中央通り2=が鎚起の技術で作り、さらに駒札の題字はダウン症の書家、金沢翔子さん(28)の揮毫(きごう)を依頼したのに伴って1日、三条別院本堂で翔子さんによる席上揮毫と母泰子さんを講師に講演会を開いた。

1日、三条別院で行われた金沢翔子さんによる席上揮毫
1日、三条別院で行われた金沢翔子さんによる席上揮毫

本堂には数百人が訪れ、金沢さん親子は黒ずくめの服で入場すると、まずふたりで本尊に向かって手を合わせ、頭を下げた。ちょうど畳くらいの大きさの紙を縦に使って左右に2枚並べた。

翔子さんは紙の前に正座すると再び手を合わせ、天井を仰いで何事かをつぶやくと、ほうきくらいある大きな筆をとって墨をつけ、両手で筆を持ち、体を使って筆先を動かした。泰子さんは筆に引っ張られて紙がずれないように、紙を押さえてサポートした。

畳ほどもある大きな紙に“慈”と“愛”を書く
畳ほどもある大きな紙に“慈”と“愛”を書く

何を書くかは任せてあり、書いた文字は、右に「慈」、左に「愛」で「慈愛」。最後に「慈」の紙に号の「小蘭」とある印を押して完成した。

「愛」の字は紙の中心より右に寄ったのが翔子さんは気になったようで、書いている途中から「もう1回、書きましょうか?」と言って笑わせ、最後に「心と感動を込めて書きました」と言いながらも、あらためて「本当にすみませんでした」と頭を下げた。

完成した作品
完成した作品

翔子さんは、NHK大河ドラマ「平清盛」の題字を揮毫したことでも知られる。完成した作品は、書に明るくない人も圧倒するほど力強く、ダイナミックな筆致。かたずのを飲むように息を殺して見ていた人たちは、しきりに謝る翔子さんに大きな拍手を送っていた。このあと泰子さんは、自身の子育ての経験から得た価値観、人生の深みについて講演した。

講演する泰子さん
講演する泰子さん

金沢さん親子は、席上揮毫に先だって玉川堂を訪問した。七代目当主の玉川基行社長が迎え、今回、駒札を作るのと同じ手法で製作した“玉川堂”とある鎚起銅器の銘板を見せ、仕事場を案内した。

翔子さんは鎚起銅器に手でふれ、「わたしもたたいてみたい」、「仕事をしてみたい」と興味津々だった。泰子さんは「大事な仕事だから心してかからないとね」と翔子さんに話していた。

玉川堂を訪問した金沢さん親子
玉川堂を訪問した金沢さん親子

玉川社長の話では、昨年、ことしと1月に広島で開かれた催事で、階は違ったが翔子さんの書展と一緒になり、「注目して見ていた」と言う。それだけに思わぬ形で翔子さんとのコラボレーションが実現することに「こういうご縁があるとは」と驚き、喜ぶ。「わたしも書をやっているからわかるが、なかなかあの感性の字は書けるものじゃない」とも。

玉川堂では毎週金曜に仕事が終わってから社員食堂で書道教室を開き、社員の半分ほどが習っている。「書をたしなみとして習ってほしいのと、日本人としての心構えをもってもらおうと。一瞬の感覚も身に付く」と玉川社長は書の大切さを説く。

鎚起銅器をさわって確かめる翔子さん
鎚起銅器をさわって確かめる翔子さん

三条別院から注文された駒札は、墨のかすれまでできる限り忠実に再現する。表面は硫化カリウムで酸化させ、紫金色に仕上げる。問題は大きさ。畳2枚分くらいもあり、「玉川堂の歴史のなかでいちばん大きいと言えるくらいのサイズになる」。

そのため、銅板を支える人手も必要になり、2、3人がかりで作業する場面が多くなりそう。硫化カリウムにつけるにも、そんなに大きな器はないので専用の物を作る必要があり、道具から作らなければならないケースがでてきそうだ。

仕事場を案内する玉川堂の玉川社長
仕事場を案内する玉川堂の玉川社長

玉川社長は、「こんなに大きな作品に挑戦させてもらえるのは光栄だし、チャレンジする精神が社内に浸透してくれればいい」と言うとともに、「鎚起銅器の駒札が全国に広まって燕三条の技術のアピールになれば」と願っている。

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