10月にオープンしたショートムービー専門のミニシアターカフェ「キネマ・カンテツ座」=関本秀次郎店主・三条市本町2=。魅力はメーンの映画だけでなく、店主が割烹仕込みの料理の腕をふるう、味は折り紙付きの充実したメニューも人気で、なかでもご飯を使ったライスコロッケ、名付けて「カンテツコロッケ」のファンがじわじわ増えている。
コロッケといえば基本はジャガイモだが、カンテツコロッケはご飯。一口食べれば、ふつうのコロッケと違うのは明らかで、薄味のなかに風味あふれた、こくのある味わいが凝縮している。
作り方はこうだ。タマネギとシメジをバターでいため、さらに小麦粉をまぶしながらいためて徐々に牛乳を入れ、塩こしょうできつめに味付けする。こうしてできたホワイトソースをご飯と一緒に煮て冷やしたら具のできあがり。あとはふつうのコロッケと同様にパン粉をつけて揚げるだけだ。
一般のコロッケは重さ80グラム前後だが、カンテツコロッケはその1.5倍の120グラム。茶わん1杯分くらいあり、揚げてあるので軽い食事代わりになる。それでいて値段は1個100円と激安で、腹も財布も満足感たっぷりだ。
店主の関本秀次郎さん(40)は、実家の家業、割烹「かわ波」=三条市横町1=で13年前から働き、3年前の7月から自分の店、バー「酒場カンテツ」=三条市本町2=を開き、二足のわらじに。昨年4月に「かわ波」をやめて「酒場カンテツ」に専念したが、ことし10月の「キネマ・カンテツ座」オープンで、2つの自分の店を掛け持ちする二足のわらじをはいている。
「キネマ・カンテツ座」ではオープン当初からカレーとから揚げ弁当をメニューにしていたが、思うように数が売れず、せっかく炊いたご飯は余る一方。余ったご飯は冷凍保存していたが、しまいに冷凍庫もいっぱいになった。
困った関本さんは、余ったご飯で作れる料理はないかと考え、思いついたのが、ライスコロッケだった。「かわ波」でも、俵型の小ぶりなライスコロッケを出していたことがあるのを思い出した。そのカンテツバージョンをと考案したのがカンテツコロッケ。イタリアにはトマト味のライスコロッケがあるようだが、カンテツコロッケは関本さんの創作料理だ。
ジャガイモの味を予想して食べると、誰もが想定外の味に驚くが、感想はほぼ間違いなく「うまい」。「キネマ・カンテツ座」はショートムービーを上映しているのが売りだが、カンテツコロッケを買うためだけに来店する人も多く、家に持ち帰って食べるので冷凍したものをまとめて分けてほしいという人もある。おかげで、最近は余ったご飯だけでは足りなくなったので、逆に多めにご飯を炊くまでになった。
「酒場カンテツ」と言えば、昨年2月から提供しているサバの缶詰めにタマネギを載せたていどの、料理とも言えないような手軽な創作料理「サバサラ」が注目された。県内スーパーの店内でサバサラのレシピが紹介されたり、全国各地に「サバサラ」の提供店が飛び火したりと広まった。
それと比べるとカンテツコロッケは方向性が百八十度違い、関本さんが料理人の経験を十分に生かした手が込んだ料理。オンラインショッピングでの販売も準備中だ。
「食べ物を目当てに来てくれるだけでもいい。ついでに映画も見てもらえればいちばんいい」と関本さん。11月は男子中学生が女子に告白する青春コメディー「フィガロの告白」と女子中学生のいじめをテーマにした「forgive」を上映していることもあり、「高校生も気軽にコロッケを食べていってほしい」と来店を待っている。