商工中金会三条部会(長谷川直会長)は2日夜、例会を開き、元ソニー技術経営担当部長の下川貴久恵(株)ダヴィンチ・ブレインズ社長を講師に「異分野こそアイデアの宝庫〜燕三条発“カワイイ”に賭ける男たち」のテーマで講演を聴いた。
中金会は、商工中金の(株)商工組合中央金庫新潟支店の取引先で組織し、三条部会は三条市や新潟市南区などの企業が会員。この日の例会は午後5時から三条市・餞心亭おゝ乃で開き、経営者など40人が出席して総会に続いて講演会を行った。
講師の下川さんは1957年生まれ。「技術を通じてお客様に夢と感動と勇気を伝えられる人間になりたいと、1982年慶応大学大学院工学研究科計測工学修士課程を修了し、ソニーに女性修士エンジニア第1号として入社した。
「女性エジソン」と呼ばれる発明エンジニアとなり、デジカメの電子シャッター特許で1999年に全国発明表彰を受賞し、ソニーの社内特許表彰の最高位「特級表彰」を2回受賞。その後、技術をビジネスに変える仕組み作りの技術経営者に転身。東京工科大学大学院でアントレプレナー修士を取得した。
2006年、交通事故で瀕死の重体から奇跡の復活。生かされた命を生かし、地球産業を興すため、09年独立起業。中小企業の技術の種をお金に変えるコンサルティングをすると共に、東洋大学理工学部、東京工科大学で教鞭をとる。技術士(経営工学部門)、NPO大田ビジネス創造協議会理事など。
講演では、モノづくりを取り巻く社会と時代の変化、異分野挑戦の法則、燕三条の“かわいい”に挑む匠たちなど、具体的な事例を紹介しながら話した。
“かわいい”に挑む企業として、ことし初めて実施された日本感性工学会の「かわいい感性デザイン賞」で最優秀賞3点のうちの1社に選ばれた燕市・(有)石田製作所の「CANGAL〜ハイヒール型プルタブオープナー〜」、新潟地区賞の三条市・(株)マルト長谷川工作所の「「ネイルニッパー“MIGNON”」、中村精工((株))の「COTETSU」の地元企業3社も紹介した。
また、ソニーのエンジニア時代の話で、今や当たり前のデジタルカメラに欠かせない電子シャッターの開発は、一度はお蔵入りしていたものと言い、「経営者の皆さま、新しいネタを種をつぶさないで、ぜひぜひ世の中に出していただきたい」と求めた。世界企業から中小企業までを知り、またエンジニアとして、女性として、さまざまな角度から見た「モノづくり」をはじめとする事業のアイデアやヒントをテンポよく話す下川さんの講演に、参加者はうなずいたり、メモをとったりして聴いていた。