起業のノウハウを学ぶ三条市の創業塾ポンテキアを受講した2期生が、燕市内にこだわりの本格的な手打ちそばの店をオープンし、隠れ家的な魅力も相まってじわじわとファンが増えている。
その店は燕市井土巻2にある「いちぶん」。三条市代官島、福士学さん(34)が経営する。福士さんは長野県の会社で8年間、そば粉を販売する営業職に就いた後、手打ちそばに魅せられて1年間、戸隠そばの店で働いた。
いったん三条市へ戻ってそば店を開業することを決意し、東京で江戸前の二八そばの名店で3年間、修行してこの10月5日にオープン。それに先駆けて今年度、創業塾ポンテキアで実務を学んだ。
店舗は約60平方メートルで17席。木材を多く使った店内は落ち着いた雰囲気で、県内作家が焼いた器を使い、青森のヒバで作られた手ざわりのいいはしを使い、特別な空間を感じる。
肝心のそばは江戸前で、そば粉はその日に使う分だけ、店の石うすでひく。石うすは入り口を入ってすぐの所でガラス越しに見ることができる。その隣でそば打ちも行っているが、基本的には営業時間前にそばを打つので実演を見られる機会はあまりない。
ソバは十日町産、コンブは羅臼、しょうゆは埼玉、カモは和歌山、かつお節は枕崎と産地を選び、ほかの食材はなるべく地元にこだわる。そばメニューは750円のせいろとかけそば、鴨せいろと鴨南蛮くらいで、今は与板産天然なめこそばも提供しているがまだ品数が少なく、これから増やしていく。
燕三条のグルメと言えば全国区の背脂ラーメンとカレーラーメンが有名。それに比べると同じ麺類でもそばは影が薄いが、「逆にそば店があまりないからニーズがあるのではと思った」と福士さんはにらんだ。
創業塾ポンテキアについては、「受講していなかったら頭のなかが整理できていなかった。実際に開店する前にしっかり腹積もりができたのは良かった」と言う。
店は裏通りに面すこともあり、目立たない反面、隠れ家的な魅力もある。屋号に使った「一分」は、面目、譲ることのできない名誉といった意味。客、地域、スタッフ、家族のためにこの店があり、そうした人たちが人生のわずかでもこの店にかかわったことを心から大切したいという思いを込めた。
開店から1カ月たち、客は「まだまだこれから」。店は5人の従業員を雇って回しており、確実に固定客もつかんでいる。「当面は季節でお出しできるメニューを増やしていきたい」と福士さんは話している。場所は県央大橋から井土巻2丁目交差点を過ぎて右に見える「カンパニョーラ」の裏手。問い合わせは「いちぶん」(電話:0256-46-8481)へ。