三条市名誉市民岩田正巳生誕120周年記念展が開幕、正月をことほぐような本格的な雪が岩田作品を引き立てる (2014.1.11)

三条市名誉市民岩田正巳生誕120周年記念展「岩田正巳展」が11日、三条東公民館と三条市歴史民俗産業資料館の2会場で開幕した。厳しい冷え込みで本格的な雪が降るあいにくの天気だったが、それも逆に新潟の正月を演出し、新春を飾るにふさわしい岩田作品を引き立てていた。

旧三条市時代に1988年に追悼展を開いて以来26年ぶり2回目の大規模な岩田正巳展。会期は19日まで9日間で、三条東公民館に59点、三条市歴史民俗産業資料館に11点の計70点の岩田作品を展覧している。

地元の美術関係者など約50人が出席して午前9時からメーン会場の三条東公民館で開場式を行った。国定勇人市長は、作品を自分だけで観覧、そしゃくするだけでなく、作品の背景事情やさまざまな知見をあわせて解説してもらうとその絵の深みがわかると作品解説会への参加も呼びかけ、「多くの皆さまに岩田先生の作品をあらためてご観覧をいただき、三条市の深い芸術文化を感じとること」を願った。

荒木常能同展実行委員長は、三条文人は文化、文政期に隆盛を極め、三条の商人がスポンサーとして後押しした三条の芸術の歴史や背景にふれた。岩田正巳画伯とともにやはり三条出身の広川操一画伯の2人がいずれも東京美術学校を卒業して研さんし、本当の歴史画を描くようになったことも話し、「岩田先生の画業にふれることができるまたとない機会なので、そのすばらしさを堪能していただきたい」と求めた。

国定市長、荒木実行委員長、熊倉均市議会議長、野崎正志市議会市民福祉常任委員長の4人でテープカットを行って開場した。

三条東公民館では、開場式に続いてさっそく横山秀樹新潟市新津美術館館長による作品鑑賞会を開いた。横山館長は県近代美術館の前身、県美術博物館の学芸員だった昭和57、8年ころ、岩田画伯と三輪晁勢の展覧会を開くために岩田画伯と会った。当時、岩田画伯から聞いた話として、東京美術学校では、自身は「びりっけつ」で、広川画伯は首席で卒業したと話していた。

横山館長は、当時の新潟県を代表する5人の画家は、土田麦僊、小林古径、横山操、三輪晁勢、そして岩田画伯で、この5人に共通するのは品があったと話した。

そして作品を順に鑑賞しながら解説した。岩田画伯は、人物を中心に描く大和絵に対して、風景を中心にしてその中に人物を描く新興大和絵運動に参画。作品「愛犬」は加茂に疎開したときに描いた。インドは1回しか行っていないが、何度も絵にした。中国の特徴的な髪型とえりを好んで描いた。

親族をモデルにするようになった。戦後、洋画が入ると洋画のような絵を描くことを要求された。晩年は色鉛筆でも描くようになった。洋画と違って日本画は色が乾くまで次の色を塗り重ねられないことなど、横山館長はさまざまな角度から岩田作品を語った。岩田ファンでも初めて聞く話が多く、来場者は熱心に聞き入っていた。

あわせて三条東公民館の和室では和菓子とお茶を楽しむ会が開かれた。岩田作品をイメージした2種類の和菓子とともに茶を味わうもので、岩田作品に特徴的な岩緑青の鮮やかな色を再現。床の間にも岩田画伯作の色紙「若菜を摘む聖徳太子」を飾り、客に切れ目がなかった。

三条東公民館では額装の作品を展示しているが、三条市歴史民俗産業資料館では軸や屏風の作品を展示。両会場を結ぶシャトルバスを午前10時から午後4時まで30分間隔で運行している。

作品解説会は18日午後3時から三条東公民館で荒木実行委員長を講師に開かれる。和菓子とお茶を楽しむ会は12日と18、19日にも三条東公民館で開かれるほか、岩田作品のプリントで作るしおりや消しゴムはんこをつくるワークショップも行われる。

関連リンク

• ふるさとの新春を飾る岩田正巳展 - 三条市（新しいウィンドウで開く）