日本美術院特待の日本画家、穂刈春雄さん(80)=燕市分水桜町=が16日、三条市内2会場で開かれている三条市名誉市民岩田正巳生誕120周年記念展「岩田正巳展」を訪れた。間もなく春の院展に出品する作品の制作にとりかかる。展示されている岩田作品に「下絵の色調が、この色がバックで良かったんだと思った」と確信。岩田画伯が亡くなって26年たってなお岩田画伯に学んでいた。
春の院展は、モロッコのひげをはやした人物をモチーフにした。その要となるのが、穂苅さんが今まで使ったことのない鮮やかな青色の“群青”。「今までとても怖くて、群青で描いたらだめかと思っていたが、思い切ってことし始めてみた」。
その穂苅さんの目をくぎ付けにしたのが、1959年の第2回日展出品作『南風舞曲』。インドの女性を描いたものと思われ、白い衣の縁の部分を彩る群青が印象的な作品だ。
穂苅さんは自身の作品について「あの色(群青)が洋服全体に入っていて、白が首と帽子に入っているのを今、描いている。まあ、どうなりますやら」と笑った。
1960年に東京高島屋で開かれた岩田画伯の個展を見に行き、岩田画伯に声をかけてもらった。その会場で「絹絵を描くときに絹の裏に牛乳より薄いくらいの胡粉(ごふん)を塗ったら描きやすいですよと言われたことがある」。
岩田画伯とはちょうど40歳違う。「おれみたいなのに話しかけてくださるなんてと思って。同じ新潟県人だからだったかも」。
あらためてたくさんの岩田画伯の作品に囲まれて、「相当な勉強をしてる先生だなということを第一に感じた」、「ただきれいだなじゃなくて、なんでこの絵はこんなに品がいいんだろうとか。品位がありますね」。ルーペを手に細部を確認したり、線に合わせて手を動かしたりと、岩田作品を鑑賞するというよりは、研究。「いい勉強になりました。死ぬまで勉強ですから」と岩田作品に背中を押されていた。
岩田正巳展は19日まで三条東公民館と三条市歴史民俗産業資料館の2会場で開催中。