かつお節削り器を製造する三条市金子新田、(株)滝沢製作所=滝沢尚郁社長=では、「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されて以来、注文がうなぎ上りで、予想外の反響に驚いている。
同社は、替刃式の鉋やのこぎりなど、各種刃物製造販売を行っている。、鰹節削り器は替刃式の鉋を活用し、1種類のみ20年前から製造していた。時代の変化などから大工道具が頭打ちとなった時期があり、対策として自社製品の見直しを行い、大工道具とは販売先の違う鰹節削り器も強化。5年ほど前に刃物メーカーならではの鉋部分を活かし、桐やプラスチックなど箱の材質やサイズを変化させた5つのアイテムをラインナップした。
滝沢社長によると、鰹節を削るのは国内でも太平洋側の地域で、鰹節削り器の出荷数もそう多いものではなかった。動き始めたのは昨年の夏過ぎころからで、最初は伊勢神宮の式年遷宮のなんらかのからみもあったのではと分析し、結婚式の引き出物用など週に1、2回の注文が入るようになった。その後、10月後半に「和食」の世界遺産登録のニュースが流れるようになるとさらに注文が入りようになり、12月、1月といっきにその数は増えており、それまでの4〜5倍に増えた。現在は、ほぼ毎日の注文で、商品がぎりぎり間に合っている状況だ。
滝沢社長は、世界遺産登録のニュースなどで「和食」のイメージとして鰹節や出汁が使われているのを見ていたが、自社製品に影響が及ぶとは意識していなかったと言う。
日ごろから「道具を使う伝統をなくさないようにしていきたい」と心がけるが、これを機に、実演なども積極的に行う考えだ。先に同社も出展した三条市内での見本市「スパークメッセ」で、かつお節を削る体験をした来場者は「香りが立ち込めていいですね」と実感し、「家にもあったからやってみよう」とかつお節だけ購入する人もおり、道具を使うきっかけの提供にもつながっていた。
今後は、商品を納入している百貨店での実演をはじめ、2月5、6、7の3日間、東京ビッグサイトで開かれる東京インターナショナル・ギフト・ショーにも出展し、替刃式の刃に自信を持つ刃物メーカーの作ったかつお節削り器をアピールしていく考え。
また、小型の桐の箱タイプは、すでに自由ヶ丘の雑貨店で販売され、小さな子どもを連れた女性からも注目されている。「和食」を通じて輸出の可能性も見えており、さらなる販路拡大が期待されるという。
鰹節削り器は、替刃式で桐材の箱の「黒潮S」(定価6,500円)、「黒潮M」(9,600円)、「黒潮L」(11,200円)、栂材の箱で引出付の「匠」(15,000円)。プラスチック製の箱の「鰹姫」(2,400円)の5種。