燕市は昨年度と今年度の2年間に4回ずつ、計8回の講座をワンセットとして開いた燕市防災リーダー養成講座を開き、そのまとめとして学んだ防災に関する情報の共有化、防災意識の啓発を図ろうと8日、市役所で同講座の公開講座を開き、市民約100人が参加した。
燕市は歴史的に大きな自然災害に見舞われた経験が少ないが、県内で起きた中越地震や中越沖地震、さらに東日本大震災とそれによって原発事故に伴う避難の現実味を増すなか、文字通り防災の市民のリーダーとなる人材を養成しようと昨年度、今年度と燕市防災リーダー養成講座を開いた。
鈴木力市長の肝いりとも言える講座で、昨年度に続いて講師に長岡造形大学の沢田雅浩准教授を迎えた。沢田准教授は中越大震災直後は中越地震復旧・復興GISプロジェクトの事務局長を務め、当時、県職だった鈴木市長も沢田准教授の指導を仰ぎ、鈴木市長にとってはいわば防災に関する師匠でもある。
昨年度から次年度とワンセットという考えでプログラムをつくった。今年度は昨年5月から8月まで4回開き、約35人が受講。うち半数ほどが昨年に続いての受講で、自主防災会の重要性を考えた1回目以降は避難所にテーマをしぼり、避難所の適正、運営、実態などを学んだ。
2年間の養成講座を終わったところで、学んだことを受講者だけにとどめず、広く市民にも共有、還元しようと、この日の公開講座となったもので、市民の関心も高く、受講者を含め約100人が来場。鈴木力市長はあいさつで、「燕市全体で防災意識が高まっていくきっかけになれば」と期待した。
株式会社エコロジーサイエンスの樋口勲主査研究員による講座の振り返り、沢田准教授による全体講評のあと、沢田教授をコーディネーター、鈴木市長と受講した市内4つの自主防災会の会長をパネリストに「地域防災力の要『地域力』を向上させるには」のテーマでパネルディスカッションを行った。
沢田准教授は講評で、今年度までと来年度以降の取り組みについて話した。この講座は燕市で初めて行っているプログラム。来年度の事業についてはまだ予算化されていないが、地域の実情を知って地図に落とす防災マップやハザードマップの作成に取り組み、「何かあったときに地域で何かできることっていっぱいあるよね。そういったことを地域のなかから探し出せるようなスキルアップをしましょうというようなことをやってみたい」、それと付随して大切な地域の人材として、防災リーダーから「大きな役割を果たしていただくことになる」とした。
防災を考えるうえでの行政と住民で違い、行政の地図は1万分の1などのスケールで地域全体を見るが、暮らしてる側はもっと大きく、人間に近いところで考えていて、1万分の1では見えてこないことがある。「そういうことができるのが地域の人たちの目線」。住民と行政では「大切な勘所が違うんで、一緒にやるんじゃなくて、そこをうまくかみあわせながら、より効果的なものをつくりたい、というような研修をさせいただく」と考えを示した。
防災についでの研修の成果は防災だけにとどまらない。「燕市さんや我々が考えているのは防災力の向上だけじゃなくて、そういったアイデア地域のことを考える、みんなで考えること、地域で考えることを横につないでいけば、ふだんのまちづくりにも絶対つながるはずで、その時に防災って結構、切り口としてはいい」、「私自身はいつも防災を考える時はイマジネーションが重要だという風に申し上げてる。想像力、人から言われたことをそのままやるんじゃなくて考えるって言うプロセスをはさむことで効果が抜群に上がる」。
さらに、こういう場で課題や悩みを共有すれば「人が地域でやってることがヒントになる」、「イマジネーションしながらそこで悩んだことを共有してみんなで解決をしていきましょうということを考えたい」と考えて取り組んできたと話し、出席した人たちは防災力だけでなく、防災をキーワードに地域の力そのものが向上することなどに真剣に聞き入っていた。