新潟の冬の味覚、洋ナシ「ル レクチエ」にフルーツカービングの彫刻を施したうえに、シロップなどで煮込んだ高級感あふれる「コンポート」を三条市の生産農家が開発。「ル レクチエ」の新しい価値を創造した商品の今後の展開が期待される。
開発したのは、土田農園=土田広樹代表・三条市井戸場=。「ル レクチエ」の淡い黄色いの果肉を、フルーツカービングでバラの花のつぼみや葉に仕立てた豪華な装飾のコンポート。上品な香りとなめらかな食感、濃厚な甘みが特徴の西洋ナシの高級品種のイメージを損なうことなく、見た目の美しさやカービング技術、保存性などの価値を高めた新しい「ル レクチエ」を誕生させた。
カービングは、果物や野菜を専用のナイフで彫刻して装飾を施すもので、タイの伝統的な文化のひとつ。三条市でカービング教室を主宰する坂井宏子さんが土田さんの育てた自然追熟のこだわりの「ル レクチエ」に装飾し、(有)四季の定期便=三条市大島=の白鳥賢さんがコンポートに仕上げた手間暇を惜しまない逸品だ。
誕生の経緯について土田さんは、「ル レクチエ」は自慢の果物だが、販売期間は年末の1カ月余りと短く、全国的にみれば知名度が低い。さらに生の存在感が大きすぎて、日持ちはしても加工品ではなかなか生の果実以上の魅力が発揮できなかった。
そんななかで、フルーツアートで付加価値を高める日本フルーツアートデザイナー協会のパートナー農家として交流していたことをきっかけに、地元でもできる人がいないかと探していたところフルーツカービング講師の坂井さんと出会い、「ル レクチエ」の果実がバラの花に生まれ変わった。
さらに賞味期限は約6カ月というコンポートに仕上げるため、これまでも商品開発で取引のある白鳥さんに協力を求め、新しい価値をまとった「ル レクチエ」が誕生した。坂井さんにとっても、せっかく丹精を尽くしてフルーツカービングを施しても果物はすぐに傷んでしまうだけに、コンポートで長期保存できるのはうれしい。
土田さんは、今でこそ農業のイメージも変わってきているが、以前は3Kの現場で、ずっとイメージを変えたいと思っていた。さらに、2011年の7.29水害ではナシ畑に泥が流れ込むなど大きな被害を受けたとき、ボランティアとして見ず知らずの200人もの人たちが力を貸してくれた。どうしようもないなかで助けてもらったことで、「人のためになることをしよう」とさまざまな考え方が変わった。
「この仕事で人の心を動かせるようなものを作りたい、ことをしたい」と考え、これまでもナシの果実をサクランボのように2つつなげて収穫する「絆ナシ」など、アイデアを実践している。
今回開発した「ル レクチエ」のコンポートについては、「手にした人がうれしい気持ちになってもらえたら」と土田さん。具体的な商品化については、新潟・日本の「「ル レクチエ」」の価値を引き上げるような展開ができたらと、今後、各方面から意見を受けて検討する。