学問の神さま、菅原道真の命日だった25日は、各地で学業成就などを願う行事が行われる天神講。燕市内の菓子店では、全国的にも珍しく道真や縁起物をかたどった天神講に供える和菓子を作っている。そこに目をつけて燕市は毎年、天神講の菓子をPRしているが、それとあわせて和洋菓子製造販売の有限会社白根屋(更科賢吉社長・燕市秋葉町3)では年々、生菓子の天神講の菓子が人気だ。
燕の天神講の菓子と言えば、市内全域で粉菓子、分水地区と吉田地区で金花糖が作られる。創業90年の白根屋でも粉菓子を作り、金花糖を仕入れて販売しているが、1週間足らずしか日持ちしない生菓子は2月に入ってから作る。
工場では毎日6、7人体制で菓子を製造しているが、洋菓子を最初から最後まで作られるのはひとりだけ。手伝いがもうひとりで、ふたりで生菓子を作るため、たくさんは作れず、販売に生産が追い付かない。
粉菓子と金花糖は型を使うので誰でも作れるが、生菓子に型はなく、職人芸。生菓子のなかでも上等な上生菓子で、食べるのがもったいなくなくなる。竹べらや竹ぐし、はしなどさまざまな道具を使って成形し、「竹の子」は着色にシナモンを使い、「栗」はバーナーで焼き色を利用する。あんこもものによってさまざまな種類を使い分けるので、少しだけほしいと言われも対応できない。
大半が450円でウメ、モモ、カキ、ミカン、イチジクなどをかたどったものもあり、もちろん「天神様」(850円)や昔は引き出物にも良く使われた縁起物の「鯛」(1,370円)や「えび」(1,200円)もある。
更科賢吉社長(62)は3代目。天神講の生菓子は50年も前から作っている。燕市が天神講の菓子のPRに力を入れるようになってことしで4年目。それに伴って全体では天神講の菓子の販売は伸びているのだろうが、販売する店が増えているので、白根屋では横ばいか返って販売数が落ちているくらいと言う。
一方で生菓子は年々、売れ行きを伸ばしている。PRのおかげで問い合わせも早くなり、「生菓子は日持ちがしないので早くから作れないと言うんですが」と更科社長はうれしい悲鳴。毎年、新潟市のスーパーにも出店しているが、生菓子を扱う菓子店が少なくなっていることもあって珍しいせいか、「飛ぶような売れ行き」(更科社長)。数1週間前に三条市内のスーパーで販売したときも、いちばん高い「鯛」は用意した25個をあっと言う間に完売し、更科社長も驚いた。
「鯛」はどこでも人気で、天神講の25日、更科社長は農産物直売所「よりな〜れ燕いち」=燕市東太田=に出店したが、「鯛」は製造が間に合わず、用意できなかった。生菓子はあればあるだけ売れるというほどの人気だ。
更科社長は「昔ながらの菓子店が元気がなく、若い後継者は洋菓子を覚えて和菓子をやらなくなる。だから珍しさや懐かしさもあって生菓子が喜ばれるのでは」と分析している。
同店では天神講以外では正月とひなまつりに生菓子を製造、販売している。天神講用は25日でいったん終了だが、ひなまつりには再びウメやモモの生菓子を販売する。