三条市大野畑、済生会三条病院は、27日から3月18日まで同院2階アートギャラリーで日本写真協会会員小野寺悌三さん(77)=燕市杣木=の写真展を開き、小野寺さんが県内の四季の風景を撮影したドラマチックな作品を展示している。
壁面に左から右へと春、夏、秋、冬、そして再び春の順にそれぞれの季節に撮影した写真16点を展示する。三条市の吉野屋で池に姿を映すシラサギ、下田郷のカキの実に雪が積もる、加茂市の竹林から、十日町市の松之山、小千谷市の山本山、山古志村など県内各地で撮影した作品が並ぶ。
夜明け前に家を出て日の出の瞬間をねらったり、日差しが傾いて暗くなった棚田の水面に日が当たっている山肌の紅葉が宝石のように映るタイミングを待ったり。惜しみなく時間を使い、足で撮影ポイントを探して決定的な瞬間をとらえている。
なかでもパノラマサイズの作品が圧巻だ。16点のうち全紙サイズが12点、パノラマが4点。パノラマは縦60センチ、横180センチという横長の大きな作品だ。全紙サイズはフィルムカメラとデジタルカメラを使っているが、パノラマは中判のフィルムカメラ。25年ほど前からフジのGX617というカメラで撮影している。
フィルムサイズは6×17センチで、面積は一般的な35ミリの約12倍もあるため解像度が高く、畳ほどある大きさにプリントしても細かな部分までシャープに描写する。作品を鑑賞するうちに、その場に立っているような感覚を味わうことができ、病院にいることを忘れてしまいそうだ。作品の左下には落款を入れるのが特徴で、それもあってなおさら日本画のような趣に仕上がっている。
小野寺はさんは写歴数十年になり、新潟二科に所属して数多くの賞を受け、県展でも奨励賞を3回、新潟日報美術振興賞を1回受け、東京新聞主催の写真コンテストでグランプリを受賞したこともある。近年は腎不全を患っていることもあり、中央の国画会会友など写真関係の役職は昨年で退いている。
今回の作品は、京都や四国でも巡回展が行われた2012年に雪梁舎=新潟市西区=で開いた写真展「四季清観」の展示作品の一部。10年ほど前から同院院内に作品を展示して年に何度か作品の入れ替えも行っており、巡回展から作品が戻ったタイミングで今回、初めて同院のアートギャラリーに作品を展示。また、ことし1月27日に供用を開始した同院の外来化学療法室にも作品を展示。1回に8時間を費やすこともある治療で利用者の気持ちを和ませている。
「風景との会話というか、あまり望遠で引っ張ってもだめ。自然と反響するような間合いが大事」と小野寺さん。撮影に出掛けると、まずは「カメラを出さないで、いいなと思う場所を探して、この場所と思ってから三脚をセッティングして自分の思う光になるのを待つ」。とくにパノラマは画面サイズが特殊なので、撮り慣れる必要があり、「パノラマを撮る目で風景を見ていないと撮れない」と言う。
デジタルカメラは、その場でおおむね写真の結果がわかるが、フィルムカメラはプリントが届くまでわからず、それを待つ間も楽しい。GX617は露出計がないので、別に露出計を持参してマニュアルで露出を決める。「意外と適正な露出を外したのがうまくいく」、「自分と被写体の会話が一致したときが何とも言えない」とうれしそうに写真の魅力を語る。
10年以上前に銀座で写真展を開いたこともあるが、地元ではこれまで縁がなく、燕三条地区での作品展は今回が初めて。「地元では人物や祭りを撮る人が多いので、風景写真はあんまり理解されないかも」と言いながらも鑑賞の目を待っている。