三条市は今年度、取り組んだ第2次農業活性化プランの成果を周知し、三条産農産物の魅力を発信しようと9日、ジオ・ワールドビップ=三条市=で平成25年度農業活性化研修会・取組自慢(成果発表)大会を開き、市外も含めて農業関係者や農業、農産物に関心のある人など62人が参加した。
第2次農業活性化プランとして今年度、「農業担い手育成塾」を開設した。グローカルマーケティング株式会社代表取締役で中小企業診断士の今井進太郎さんを講師に10人の若手農業者が参加。14回コースで売上アップ策、商品の強みと売りの検討、販売戦略の作成、営業力強化などを学び、農業経営改善に向けた具体的取り組み計画の作成、実践を行った。
その成果の発表の場をとこの日の大会を企画し、あわせて内容を膨らませた。前半は取組自慢(成果発表)大会で、農業担い手育成塾が「マーケティングの取組実践、これからはコラボ」のテーマで発表したほか、米穀事業を行う(株)白熊=新潟市南区=が「三条産米の海外輸出」、燕三条イタリア野菜研究会が「イタリア野菜の産地間連携」をテーマにそれぞれ発表した。
休憩をはさんで後半は講演会で、講師の今井さんと国定勇人市長、7月上旬に三条市大島にオープンする農産物直売所「つばさんフルーツ通り ふるふる」をプロデュースする野菜ソムリエ山岸拓真さんの3人で対談形式で行った。
また、塾生は農産物直売ブースを開設して、市内ベーカリーとコラボしたイチゴ「越後姫」のロールケーキの試食も行った。
農業担い手育成塾は、下は22歳からの若手8人が発表。インターネットやfacebookの活用、POPやのぼりの作成、パブリシティについて、コラボレーションからの商品化、直売所での取り組みとマルシェへの出店、県外への進出と将来の展望についてなどをテーマにそれぞれが取り組んだ成果を発表した。
講演会で国定市長は、燕三条イタリア野菜研究会の発表で産地化すると低価格化するという話があったことにふれ、「価格競争にとらわれない見せ方」が「これからの三条の農業でいちばん考えていかなければならない」とした。
山岸さんは、おいしい価値は人によって違い、「大事なのは人、農家」。たくさんの農家のなかから買ってみたいと選ばれるには、「人としての魅力、話の魅力をトータルとして出していかなければならない」とし、自身がプロデュースする農家レストランでの実例を話した。
今井さんは昨年、三条産食材の新たな魅力を三条市出身のイタリア料理店オーナーシェフの料理を通じて発信するイベント「小松シェフ×三条産食材×若手生産者」が行われたことを話題にすると、国定市長は単に地元産野菜を使っただけでなく、参加意識が魅力を引き出し、その路線が三条のメーンシステムになれるかどうかはわからないが、「三条産農産物の少なくともサブシステムとしては取り組むべきひとつの方向感」とした。
さらに「産地の話は東京の消費者はおなかいっぱいになってる」。その状況で「産地名を出してやる時代ではないのでは?」と疑問を投げかけ、農産物もデザインや消費者への提案方法なども大切で、新潟で売られている、もいでないエダマメをもぐという行為に消費者が喜びを感じ、そうしたところに「三条の売り方があるのでは」と可能性を示した。
山岸さんも地名で売ることについては、「その地名なら何でもいいという風潮」は危険で、「結果的においしいものが三条産だった、というのが理想」で、「本当においしいものを作っている農家にスポットを当てるべき」。
さらに「“体験時間”が価値を伝えるキーワード」で、それほどコーヒーが好きでもなかった若者たちが、燕市のコーヒースタンド「ツバメコーヒー」の空間、香り、おいしさの体験につられて次々とコーヒーを買って帰った話を例に、「あるていどの価値を知ってもらうには時間が必要」と説いた。
国定市長は、SNSは「名残惜しさをひきずらせてくれるというところに良さがある」と言えば、今井さんは「農家からの情報が直接、届くのはおいしさにもつながる」と有効性を話す一方、国定市長は、更新が滞ると逆効果になることも指摘した。
最後に山岸さんは、三条で農産物直売所をやるにあたって果物にはあまり興味なかったが、食べてみて驚いた。「すごい幸せになった。おいしいとか、うまいじゃない。高級ホテルにいる気分。たったひとつでそんな気持ちになる」。“畑の朝カフェ”など、三条の若手農家には勢いがあるという話は市外にも聞こえており、それが一般の人にもどんどん届くようになることを願った。
国定市長は、「農家の技術を消費者にそのまま伝え、それが継続されるよう取り組みを支援をすること」が市町村の農業分野における役割。この大会の反省点として、室内ではなく、外で体感してもらいながら同じ仲間意識をもって座学に臨むことと話した。