今年度、三條機械スタジアム=三条市月岡=の指定管理者、株式会社丸富(柴山昌彦社長・三条市若宮新田)の野球を通した貢献活動を調査、研究した慶応大学大学院政策メディア研究科SCM(Sports Community Management)は、その調査研究の結果をまとめて25日、「スポーツ施設からウェルネス施設へー“三条モデルのスタジアム運営”を活かしてー」として国定勇人三条市長に対し提言した。
SCMからアドバイザーの慶応大学総合政策学部・玉村雅敏准教授、東京工科大学メディア学部助教で慶応大学総合政策学部非常勤講師の松橋崇史さん、嘉悦大学ビジネス創造学部専任講師で慶応大学政策・メディア研究科博士課程の岩月基洋さん、そして昨年は55日間、三条市に滞在して三條機械スタジアムの仕事も手伝いながら現場で内側からフィールドワークし、修士論文のテーマとして取り組んだ慶応大大学院修士2年斎藤和真さんが三条市を訪れ、丸富の柴山社長も同席した。
提言によると、“三条モデル”の特徴は、人口10万人規模なのに民間企業が指定管理者となり、それもスポーツや施設管理をメーンビジネスとしない、農業用機械の販売を主力とする丸富を指定管理者としているのが珍しい。加えてただ施設を管理するだけにとどまらず規模の大きな自主事業を行い、ひいてはそれが三条地域の多様な主体の協力、支援、参画を促している。
具体的には、公共スポーツ施設の指定管理は、大都市では民間企業が一般的だが、地方都市の指定管理は自治体出資の法人や体育協会による管理が一般的で、三条のようなケースは珍しい。
プロ野球2軍戦、スポーツ教室、保育園児の絵画展覧会の開催や利用者によるごみ拾いなど施設管理以外の活動を積極的に行い、主体となって協力、支援、参画。2軍戦は入場料収入のほかに協賛金で収入を捻出。2軍戦をきっかけに地域ネットワークが広がり、その背景には三条市が産業集積地であり、企業ネットワークが醸成されていることがある。
そうした調査研究から「スポーツ施設からウェルネス施設へ」と提案する。ソフトでは指定管理者として茨城県鹿嶋市や富山県富山市のようなスポーツクラブ、見附市のような市場やレストランの開設。三条モデルを活性化させるためのソフトインフラとして埼玉県神川町のような活性化のためのインセンティブ設計、施設内共通ポイント制度の実施をあげた。
ハードではそれを支えるウオーキングロードの拡充、常設市場施設の開設で日常的なにぎわいをつくることで全体の交流を醸成する。すでにイベントは数多く行われているが、これに日常のにぎわいをうまくミックスさせれば、週末と平日のにぎわいから相乗効果が生まれるとした。
国定市長は、市内の指定管理者のなかでも「本当に丸富さんは非常に特異な地位を占めている」とする一方、自戒を込めて「どんなに丸富さんが頑張っても現時点では野球場という印象の外には脱却しきれないのが痛いところ」。「イベントも仕掛けの仕方はすごくおもしろいが、ぼくらがいけないが、市内全体としてはあまり認知されずに随分、本来、想定しているイメージよりはお客さんの足が鈍かったり、苦戦状況が続いている」との認識を示した。
ただ、「多分、コップの水ぎりぎりいっぱいくらいのところまできているんじゃないかと思う」、「あとひとつ何かをすると実はわーっと展開していくんじゃないかと」いった期待も。自身の印象として、三条マルシェの成功の要因のひとつは、あえてごみごみ感を出しているところにあるが、「野球は日本人が適度と思っている規模感よりものすごく広大」で、「これを日本人が御しきれるのかということに対してかなり僕は否定的とは言わないが随分、慎重」と難しさも示した。
そうしたなかで、「ウェルネス施設への転換というのはすごくいい発想ですね」と共感。玉村准教授も「行政の部署で、それこそスマートウェルネススタジアム構想でもつくり、どう展開するのかとか。一回つくってみたらいい。いろんな企業でこんなことできるんじゃないかとか、それぐらいの絵を描いてしまってもいいのではないか」とさらに踏み込んで提案。国定市長は、「丸富さんが一生懸命やってるからいいやと、委ねきっているところもあったから、ひとつの核として仕切り直す必要がある。来年度も引き続きよろしく」と成果に期待した。SCMでは、引き続き来年度もより詳細な調査、研究を進める。