鍬(くわ)をはじめとする農具メーカー株式会社相田合同工場=相田聡社長・三条市田島1=は、12日午前10時半から同社須戸工場=同市須戸新田1178-1=で「正しいクワの使い方、選び方ワークショップ」を開き、家庭菜園を始める人や作業に適したくわを知りたい人などの参加を呼びかけている。
ワークショップでは、くわの使い方や選び方の座学に始まり、11時から土づくりとジャガイモなどの作物の種植えを体験。約2時間で終わる。参加費は資料代を込み1,000円。参加者は畑作業のできる靴やタオル、軍手を持参する。参加申し込みや問い合わせは須戸工場(電話:0256-38-5848)で受け付ける。
同社は昨年6月から月1回、主に須戸工場でワークショップ開いている。同社のホームページやフェイスブックを活用して家庭菜園の初心者に参加を呼びかけ、同社の製品を扱う問屋にも開催を案内。毎回、数人が参加している。
目的は、同社のくわの品質を確かめてもらう場をつくることだが、ワークショップを通してユーザーの視点に立ったたくさんの“気づきを得ることができ、ラベルの改良から売上増など予想外の効果につながったケースもある。
同社は昭和5年(1930)の創業。品質には絶対の自信があるが、低価格の外国産のくわが並ぶホームセンターなどで消費者から同社のくわを選択してもらうのは難しい。販売する問屋や店舗では、「使えば良さがわかる」と言ってきたものの、使う場面の提供はなく、ミスマッチを解消するための場として直接、ユーザーに説明できるワークショップを行うことにした。
ワークショップは企画、運営は自社の商品を知ることにもつながるので、若手社員に任せている。相田社長はチェックやサポートにだけ手を貸す。
昨年、入社してまもなく担当に抜擢された20歳の駒形さんは、ワークショップで初心者のユーザーに何をどうやって伝えようかと考え、くわに張ってあるラベルに注目した。ラベルには「軽量レーキ感覚で使える」とある。これを「掻き集めて混ぜ込める」に変更した。初心者にはわからない専門用語をかみ砕いて具体的な表現にし、あわせてデザインも変えた。その結果、改良した新しいラベルを張ったくわの売り上げは、前年の3倍にものぼる大きな効果となってあらわれた。
取引先のバイヤーが参加するというワークショップを前に、駒形さんは緊張して眠れなかった夜もある。他社製品との違いを説明したいと考えていたときに、相田社長が購入してきてくれた海外製品を使ってみた。「こんなの使っていたら、作業自体やりたくなくなってしまう」と明らかな違いを体感し、「早くバイヤーさんに伝えたい」と自社製品への自信になった。
相田社長は、最初は前に出られなかった若手社員についても「やるたびに顔つきが違ってくる」、頑張っている若手社員を見てベテランも刺激を受けていると言う。「今の自分にできることに気づくことが大事」で、「目の前の客とふれあうことで技術の習得も早いかもしれない」とも。「申し訳ないけど、社員研修になっている」と当初、想定しなかったさまざまな効果を生んでいる。
また、「三条の製品はこういうのばっかり」と、品物を体験してもらえる場の提供などを町全体の取組としてできたらいいのではと言い、自社のワークショップも今後は農家やはさみなど他のメーカーなどと連携していくことも考えている。