燕市・サンロード宮町の商店街はこの冬、老朽化したオーバーアーケードが取り壊された。ただでさえにぎわいの薄れが叫ばれて久しく、一段と拍車がかかるのではと心配が広がるなか、商店街に真ん中にある戸隠神社(星野和彦宮司・宮町)では、市民に境内を定期的に開放する仮称「プロジェクト“市(いち)”」を発案。内容はまだ何も決まっていないが、早ければ5月中にもスタートする。
発案したのは、これまでもさまざまなアイデアを企画してきた星野宮司。オーバーアーケードは国の“まちづくり事業”として撤去されたが、「さあ、どうするんだと。にぎわいを取り戻すために境内を活用できるんじゃないかと。そうなら全面的に協力する」とアイデアマン魂に火が着いた。
目の前のサンロード宮町では定期市「3・8の市」が開かれるが、それとはまったく別で考えている。境内を開放してできることといえば、まずフリーマーケットだろうが、それにはこだわらない。むしろ今までイベントなどにあまり顔を出さない人を引っ張り出したいと、フリーマーケット以外の方が好ましいと星野宮司は言う。
天照大神は岩戸開きの神であり、音楽でも構わない。「家庭で不要になったものを物々交換する“もったいない市”とかいうものでもいい。起業家が商品を見てもらう場でもいいし、自己PRの場にもしたい。そこから新しい可能性が広がる」と言い、その先には「市内のあちこちの神社で同じようなことができないかと。道路と違って境内は交通規制をかける必要がないので、すぐにできる」と夢は広がる。
星野さんはこのプロジェクトの右腕として、神社のすぐそばに住む氏子で燕市議の小林由明さん(39)に相談をもちかけた。小林さんは「ふつうの市じゃなく、ハイセンスなものもやりたい。青山コモンズのようなものができれば」とノリノリだ。青山コモンズは、東京の青山周辺で活動する文化機関やコミュニティーと連携した新たな芸術、文化、環境、地域活動を発信していくプラットフォーム。小林さんも壮大なイメージを膨らませる。
燕市や神社、まちの歴史を紹介するコーナーがあってもいいし、若い起業家の紹介でもいい。「戸隠神社に行けば何かおもしろいことをやっているというような市になったら」。
星野宮司と小林さんのイメージは必ずしも一致していないが、小林さんが言う「お参りの人も毎日、結構な数がある。この市によって新しい人の流れが生まれてくるのでは」という思いは同じだ。
実施を社務所だけに任せるのは負担が大きいので、運営の主体となる、市民による委員会のような組織を立ち上げたいと小林さん。5月1日夜に戸隠神社拝殿に主立ったメンバーが集まり、どんなことができるかというネタだしのワークショップを行う。それを振り出しに内容を検討、仲間を募っていく。
最初から大きなことは考えていない。とりあえず戸隠神社の本部テントを立てれば始められるので、5月17、18日と行われる春祭りが終わったあと、5月中には第1回を開く計画だ。サンロード宮町まちづくり事業は3月15日に完工したが、それから2カ月、早くも新生サンロード宮町の胎動が「プロジェクト“市”」から聞こえてくる。