三条市内の歴史的建造物のひとつ、旧外山虎松商店=神明町=を全国各地のクリエーターが集うシェアスペース&ライブラリーに生まれ変わらせようという取り組みが進んでいる。必要な資金はクラウドファンディングで募り、この夏のオープンを目指している。
旧外山虎松商店は昭和27年(1952)の建築で、1階143平方メートル、2階107平方メートル。神明宮そばに立つ。正面角の2階部分がアーチを描き、鉄筋コンクリート造と見まがう外観は印象的で、市内でもシンボリックな建物のひとつであり、原風景ともなっている人もあるだろう。
実際は木造の切妻妻入の建物で、装飾を施したいわゆる“看板建築”。ただ、それ以前の鉄筋コンクリート造だった時代の外観の一部を再現したとされる。この主家の裏には“コマ”とよぶ平屋建ての建物が接続する。“コマ”は昭和9年(1934)以前にあったとされ、その後に主家が建設されたため、内部は忍者屋敷のように複雑な構造をしている。
この建物が空き家になり、その趣のある建築に引きつけられたのが小山雅由さん(34)。埼玉県川口市出身、早稲田大学政治経済学部政治学科を卒業し、今は同大学院の公共経営研究科に在籍。2009年に三条市で男のキッチンツールのプロデュースを本格的に開始し、燕三条へ移り住み、11年には三条鍛冶の「握り鋏」もプロデュース。燕三条でメーカーとクリエーターがつながる場づくりに取り組んでいる。
場づくりには、魅力的な空間が必要。江戸時代から続く玩具店の倉庫を改装して一昨年オープンしたさまざまな人が集う場所、「Nui.」のイメージがあった。そのイメージが旧外山虎松商店にレトロな空間と重なった。クリエーターが集う場に変えようという小山さんの思いを伝えようと、19日に旧外山虎松商店内で作戦会議を開き、賛同する人や興味のある人など約40人が参加する盛況だった。
資金はこのプロジェクトのPRも兼ねてクラウド・ファンディングを利用することにした。クラウド・ファンディングは、インターネット上で不特定多数の人から資金を募る仕組み。クラウドファンディングの「FAAVO」を利用し、改装費やオフィス備品、ライブラリー書籍費用など支援金100万円を4月中旬から募り、28日までに20人のサポーターから合わせて28万8,000円が寄せられた。締め切りの5月30日までに100万円達成を目指している。
思いを伝え、旧外山虎松商店の魅力を知ってもらおうと、神明宮の春祭りにあわせて28、29日と旧外山虎松商店内を一般公開しており、29日は午前10時から午後9時まで公開する。
利用者にとって最も気になる利用料は、正会員と準会員にわけて、空間を使うだけの準会員は年間1万円ていど、正会員は住所利用、法人登記利用、ロッカー利用などを含めてオフィスとしての利用できるようにし、料金は法人の規模などを考え合わせた設定を考えている。首都圏とのクリエーターの交流を進め、利用者を増やすためにも、首都圏のコワーキングスペースと連携した相互利用も実現したい考えだ。
「ものづくりをやっていきたい思いと商店街も同時に盛り上げていく仕組みにしたい」、「若い人を呼び込んで、製造業とつながってイノベーションが起きる仕組みをつくりたい」と小山さんは言う。
事業の継続については、地方のシェアスペースにどれだけのニーズがあるかがカギだが、「ライフスタイルが多様化し、今後、Uターン、Iターンが高まるなかで、こういう場が重要になる」と小山さんは確信する。「ホワイトカラーでもブルーカラーでもない、クリエイティブなノーカラーのクラスをどれだけ地域に集め、取り込めるか」と分析する。
小山さんは“DIY”もキーワードにしている。それは日曜大工といったものだけでなく、「自分たちでまちをつくっていくということ」で、「ここからあたらしいまちづくりを発信していきたい」と話している。