伝統的工芸品の指定を受ける「越後三条打刃物」を製造する「越後三条鍛冶集団」の工匠用鑿(のみ)・特殊打刃物製造の田斎明夫さん(74)=田斎のみ製作所=と日本剃刀(かみそり)製造の水落良市さん(71)=三条製作所=の2人が伝統工芸士の試験に合格し、新たな伝統工芸士が誕生した。
「越後三条打刃物」は、平成21年(2009)に越後三条鍛冶集団=小林由夫会長・27事業所37人=が指定組合となり、伝統的な鍛冶技術で作られる包丁や切出小刀など10品目を主要製品に経産相から伝統的工芸品の指定を受けた。あわせて伝産品を製造する職人が伝統工芸士の試験に挑戦し、一昨年の2012年に4人、昨年4人に加え、田斎さんと水落さんの2人が合格し、「越後鍛冶集団」の専門職10人が伝統工芸士となった。
田斎さんと水落さんは、昨年10月の全国統一知識試験と実技試験を受験して合格。このほど伝統工芸士の交付を受けて、9日午後7時から三条市・越前屋ホテルで開かれた「越後三条鍛冶集団 伝統工芸士誕生祝賀会」で国定勇人三条市長から認定証の伝達を受けた。
祝賀会は、斉藤弘文三条商工会議所会頭、兼古耕一(協)三条工業会理事長、産地審査委員の香月節子さんなど来賓や三条鍛冶集団メンバーなど約40人が出席した。
伝統工芸士の先輩でもある鍛冶集団の小林会長があいさつし、鍛冶集団の2人が新たに国の認定する資格を得て伝統工芸士になったことや今回は31産地34工芸品に対して114人が受験し、合格は88人だったことなどを紹介した。
小林会長は「資格は個人的のものだが、この資格は三条の産業のための大事な資格だとご理解いただいて、今後の産業の発展、われわれ小さな事業所の伝統的な金物部門をアピールする大事な資格だと自覚をしていただいて、おおいに活動していただきたい」と新たな伝統工芸士の誕生を喜び、「地道ながら徐々に三条の製品の良さをアピールできるような状態になっていくのでは」、「地道に地道にゆっくり三条の発展に尽くしたいと思いで頑張っていきたい」と決意を新たにし、支援と協力を求めた。
認定証の伝達を受けた田斎さんは、伝統工芸士という称号は、多くの支えのおかげと述べ、「私ごとになりますが、12歳のときに市内の佐藤さんという、のみ鍛冶に弟子入りし、住み込みで20歳まで年季を務め、1年のお礼奉公という徒弟制度という形の中で仕事をしいていただき、36歳で独立し、ことし75歳になります。私はのみを作ること以外、何の取りえもございませんが、これからも鍛冶道場、鍛冶集団のメンバーのひとりとして何かのお手伝いができればと考えております」。
水落さんは、「わたしたち越後三条鍛冶集団には、技術を習得した次代を担う若い人たちが多く育ってきております。これらの方々と共に伝統産業を守り、より大きく隆盛させるべく、今ひとたび努力する所存にございます」と述べ、それぞれが感謝とこれからも変わらぬ支援と協力を求めた。