台風8号接近の接近と前線の影響で激しい雨が降ったために9日朝、県の土砂災害警戒情報が出された燕市では、分水地区の7自治会に避難勧告を発令し、燕市国上勤労者体育センターに避難所を開設し、7自治会合わせて315世帯の1,047人のうち28世帯の51人が避難した。
燕市では、午前5時に災害対策本部を設置し、6時半に渡部、幕島の自治会に避難準備情報を発令し、7時40分にはそれに代えて避難勧告を発令した。さらに7時50分にそこから近い中島(竹ヶ花)、長辰、真木山、国上、太田の各自治会に避難準備情報、同様に8時15分に避難勧告を発令。あわせて燕市国上勤労者体育センターに避難所を開設した。
燕市では今年度から県の土砂災害前触れ注意情報や土砂災害警戒情報にあわせて土砂災害避難情報を発令、避難所を開設することにしていた。その対象が今回の7自治会。来週、その内容に関する地元説明会を開く予定だったが、台風8号の接近で前倒しし、前日8日朝に説明会を開いたばかり。
そのおかげもあって、避難所への避難行動は速やかだった。1,047人のうち51人の避難は少ないように思えるが、1,047人は単純に7自治会の住民を足し算しただけで、実際に土砂崩れの危険性のある家に住む人は一部。初めての避難所開設にしては、思った以上に大勢が避難した。
避難は自分で歩いて来たり、自分で車を運転したりのほか、働きに出る家族に送ってもらった人も。大半が高齢者で、学校を休んだ子どももいた。また、このほかに渡部ふれあいセンターに3人が避難した。市は避難所に保健師3人を含む市職員8人、渡部ふれあいセンターに2人を配置した。
渡部の自治会長、中務紀蔵さん(73)も町内の人と一緒に避難所へ。「大雨に雷で、夜の12時半からテレビをつけっぱなしでほとんど眠られなかった」と言う。前日も同じ燕市国上勤労者体育センターで市の土砂災害避難情報の説明会が開かれたばかりで、「いきなり本番になった」と目を丸くした。
中務さんは日中、留守になる家を把握しており、日中に高齢者だけになる家には電話したり、訪問したりして避難を呼びかけた。地元では土砂崩れはあっても実際に家屋への被害が出た経験はないが、「避難勧告が出て避難するのは当然で、大事なこと」と中務さん。しかし、「逆にこれで大したことがないと、行かなくていいんだとなると困る」と話していた。
避難してきた住民は、体育館のござの上や和室、ロビーで過ごし、「まさか自分が避難するようなことになるとは」、「これから台風が来たらどうなるんだろ」、「それほど危機感があるわけじゃないけど」などと不安そうに話していた。「返ってもいいろっかね?」と話す避難者と職員が「まだ避難勧告が解除されてねっけね」、「一時的に戻るならいいけど…」、「家の方が心配」などとやりとりする場面もあった。
問題になったのは昼食。市は地元で説明会を開いたものの、避難者の昼食をどう手当てするかを決めていなかった。内部で会議を開き、費用は避難した人たちの自己負担でおにぎりをあっせんすることにしたが、これに避難している人が反発。「そんな野暮な話はない」、「ただでさえ家に帰りたいって言ってるのに、みんな家に帰ってしまう」と声を荒げる場面もあった。渡部自治会は、いったん費用を自治会で肩代わりすることにしていた。
三条市では避難所ので食費は原則として市が負担しているという。今回、三条市も避難所を開設したが、一ノ木戸小学校調理場で炊きだし650食を準備して避難所へ配送している。燕市では今回の反省から、とりあえず国上勤労者体育センターに長期保存できる食料を備蓄して避難者に提供するような方向で検討することにした。