アルゼンチンが優勝した1978年のW杯。長いカーリーヘアをなびかせた華麗なドリブルで活躍したアルゼンチンのエースストライカー、ケンペスに魅せられた。ロック少年にとっては、まるでレッド・ツェッペリンのギタリスト、ジミー・ペイジのように見えた。スポーツといえば五分刈りという時代に、肩まで届く長髪が許されるスポーツがあるということが衝撃的だった。
ファウルされていなくてもファウルをアピールするという、サッカー選手の狡猾さにも驚いたが、その点でもアルゼンチンは巧みだった。嫌いになっても良さそうなものだが、なぜかますます引きつけられた。以来、ずっとアルゼンチンファンだ。今回のW杯も非国民と言われようが、やはりアルゼンチンを応援している。アルゼンチンが負けたらW杯は終わるのだ。
決勝の相手はドイツ。86年、90年と決勝はアルゼンチン対西ドイツと2大会続けて同じカードとなり、前者はアルゼンチン、後者は西ドイツが勝った。アルゼンチンは2大会とも主将はマラドーナ。90年大会では、試合終了近くになって微妙な判定でアルゼンチンがファウルでPKをとられて0-1で敗れる後味の悪い試合。マラドーナが悔しがって号泣するシーンが今も脳裏に焼き付いている。そんなわけでW杯はアルゼンチン視点で覚えている場面が多い。
今大会に目を移すとベスト4に残ったのはアルゼンチン、ドイツ、オランダ、ブラジル。先に行われた準決勝でブラジルは1-7と歴史的大敗をした。ここでアルゼンチンの優勝が約束されたと思った。なぜなら、これまでのW杯では南米開催はすべて南米のチームが優勝しているからだ。ブラジルが敗退した時点で残った南米のチームはアルゼンチンだけ。今回もそれを実現するかのように準決勝でオランダにPK勝ちし、あとは決勝でドイツに勝てば今大会でも南米開催で南米のチームが優勝するという歴史が続くことになる。
今大会では当初から実力はドイツがアルゼンチンを上回っていると思っていたが、それにしてもブラジル戦の大勝は、いくらブラジルがネイマールと主将を欠いたとはいえ、驚くべき破壊力を見せつけた。アルゼンチンの優勝は約束されているとか言いながら、アルゼンチンの決勝での勝算は?と聞かれれば、せいぜい“五分五分”くらいと答えるかな…。