三条市の事業である「プレ工場の祭典」「工場の祭典」などで地域と連携を深めている、東京芸術大学デザイン科松下計(まつした けい)教授が、ことし5月に東京・広尾にアート&建築&デザインをメインテーマとした、コミュニティースペース「Earth & Salt(アース・アンド・ソルト)」を開設した。JR恵比寿駅から徒歩約10分。古民家を改装したスタイリッシュな建物内に、アートギャラリー、ワークスペース、カフェなどが併設されている。
7月11日(金)〜13日(日)に開かれたオープニングイベントを取材した。玄関入ってすぐ、松下教授が考案した白いシャツが並ぶ。「最高の手触りと品質を追い求めた」(松下教授)プレーンな白いシャツは、やわらかくすっと手になじむ。まるでずっと昔から着続けていたような懐かしさ。過剰過ぎる昨今のデザインへのひとつの問いかけと言えるプロダクトだ。
店内カフェスペースのオープニングパーティー会場では、この白いシャツに身を包んだスタッフたちが忙しく働いている。芸大生やOBたちだ。そして、デザイナーやアーティストはもちろん、省庁、代理店、メーカー、マスコミなど多士済々なゲストたちが、さまざまなテーマで熱心に語り合っている。見ている間にも人の輪はどんどん入れ替わり、初対面同士が活発に意見を交換している。空気が熱い。
ゲストの間をまるでスタッフのように忙しく動き回る松下教授をやっとつかまえ、話を聞いた。「ここは小さな文化拠点なのです。アート、建築、デザインを中心としてはいますが、それだけにはこだわらず、トーク、コンサート、パフォーマンス、ワークショップなど、広く情報を交差させ、社会に提案・発信していきたいですね」。確かに、よくある名刺交換会のようなレセプションパーティーとは、まったく異なる雰囲気である。学生から業界の重鎮、外国人までが自分の仕事をていねいに語り、お互いの接点を求めて深く細かい会話を交わしている。この空気こそが「Earth & Salt」。松下教授が磁場となって、人々をつなぎ続けたからこそ成し得たに違いない。
オープニングを祝福して、三条市長が私費で贈呈した花を掲げているのは、昨年「プレ工場の祭典」に参加した大学院生だ。「工場見学ツアーではたいへんお世話になりました。本当に楽しかったです!。ぜひ燕三条地域を再度、訪問させてください。次は職人さんたちとたくさん語り合ったり、技術を教えてもらったり。もっと深く広く体験してみたいことがとてもたくさんあります」と笑顔で話してくれた。その後も人の波は途切れることはなく、深夜まで歓談は続いた。
この場の楽しみ方は人ぞれぞれだ。静かなカフェスペースで、オーガニックにこだわったランチをゆっくり楽しむのも良い。友人と誘い合ってドリンク+スイーツと共におしゃべりする時間も素敵だ。冒頭の白シャツも入手できる。週末に開催される各種セッションにもぜひ参加してみよう。新進気鋭のアーチストによる作品展示や、研究者によるトークショー、芸大で実施されたプロジェクトの発表など、幅広いテーマで活発な意見交換がおこなわれている。ここで県央地域のコンテンツを発信してみたら、今までとはまったく違うリアクションを得られるかもしれない。
入り口に掲げられていた一文、「地球上のすべてのNatural objectsに含まれている塩のように、小さな感性の粒が地球を覆っている、そんなイメージで Earth & Salt は始動させていただきます」が印象的だった。ここからたくさんの塩=感性が広がり、その粒同士が交流することによって新しい何かが産み出されるに違いない。
東京を訪問する機会があったら、ぜひ一度のぞいてみたい文化拠点がまた一つ増えた。
寄稿:中島郁子(三条市「若手クリエーター交流事業」コーディネーター)
【基本情報】
店名:Earth & Salt(アースアンドソルト)
住所:〒150-0012 東京都渋谷区東京都渋谷区広尾2丁目2番地18号
電話番号:03-6419-7218
ウェブサイト:http://earthandsalt.com
営業時間:
[カフェ]11:00〜18:00
[ギャラリー・ワークスペース]11:00〜18:00
定休日:水曜日