養豚場で撮った写真集『人(ひと)』を出版した燕市出身の写真家、渡辺一城さん(35)=東京都新宿区=の個展「豚」が31日まで燕市産業史料館で開かれており、このほどそのトークショー「MINI講演会」が開かれた。17日は「渡辺一城 写真館」が開かれ、渡辺さんが4×5判の大きなポラロイドカメラで1カット3,000円で撮影してくれるイベントが行われる。
トークショーは、一城さんと、昨年6月に写真集の出版記念展が開かれた新宿の「B GALLERY」のキュレーター藤木洋介さん、それに同史料館学芸員であり、幼なじみでもある斉藤優介さんをゲストに行われた。
展示会場で開き、約50人が来場して会場は満杯。以前から渡辺さんを知る地元の人が多く、ふるさとならではの近所の寄り合いのようでもある、ほのぼのとした温かさにあふれる雰囲気に包まれた。
藤木さんは会場を訪れた両親にも発言を求めた。父の健児さん(62)は、一城さんが学校で写真の勉強をしたいと言いだし、農家を継いでくれればいいと思っていたので「正直、心配してたが、大勢の人から応援して指導してもらい、頑張ってるなと思った」。母の久美子さん(59)は、「どれだけ豚に執念があるのかと思ったが、おじいちゃんを通して豚の写真を見たときに、ひとつにつながってるんだと思った」と話した。
ことし7月に90歳で死去した祖父、笠原喜代平さんとともに1998年まで近所で笠原精肉店を営んだ祖母、芳枝さん(91)も車いすで来場した。一城さんにとって笠原精肉店は、地元の小中川にあった“豚団地”と呼ばれた養豚場とともに豚のイメージを刷り込まれた。
会場には喜代平さんと芳枝さんが精肉店の跡地に立って撮ったツーショットが展示されているほか、店内に使われないまま放置されていた油で満たされた調理器具を写した写真もある。芳枝さんは「コロッケとかメンチカツとか、油のにおいが懐かしくなる」と写真に目を細めていた。
燕高校3年のときに三者面談で写真家を目指したいという一城さんの夢を「羽ばたかせてやってくれ」と親に言ってくれた担任の藤田昭さんも来場し、豚の写真に「ショックを受けた」、「ギリシャの哲学者の老いた姿に見えた」と一城さんの作品をとらえていた。