県内外で活躍する七宝焼きの作家、枝村佐門さん(64)=三条市東新保=の七宝彫金展が5日から28日まで燕市産業史料館で開かれており、彫金や鍛金といった金工まで幅広く手掛ける枝村さんの多彩な作品53点を一堂に展示している。
枝村さんは1949年新潟市南区(旧白根市新飯田)の生まれ。新潟県工芸会会員で近年も毎月のように個展を開き、指導者としても活躍し、精力的な活動を続け、七宝焼きの魅力を伝えている。
同史料館の企画展には、今回が初めての登場。この2、3カ月はこれに向けた創作活動に注力。展示した作品で身につけた技術をすべてさらけ出している。
七宝焼きは金属の下地の上に釉薬(ゆうやく)を載せて約800度で焼き、融けた釉薬が生むガラスやエナメルの透明感や光沢があふれる鮮やかな色で彩る。
スプーンに施された七宝焼きがある。七宝焼きの性質上、グラデーションの表現が難しいが、展示しているスプーン「夢の雫」に描かれた女性の顔は、アイシャドーやほおの赤味、さらに膨らみをもたせるために、七宝焼きとしてはあり得ないほどの20回以上も釉薬を重ねて焼いた。加えて金属の下地がなくステンドグラスのようになった“プリカジュール”という技術も施しており、七宝焼きにあまり詳しくない人の目もくぎ付けにする美しさを放っている。
銅板をたがねで彫刻した彫金のパネルやたたいて鍛金を施したうえに七宝焼きを施したものもあり、七宝焼きと金工を駆使することで、創作の幅は広い。
七宝焼きは明治時代に釉薬が改良された。それまでの光沢のない七宝焼きは“泥七宝”と呼ばれ、いったんは制作が絶えたが、枝村さんはその手法も身に着け、泥七宝の花瓶や香合も展示する。
「恋杯(こいさかずき)」と呼ぶ杯のシリーズは、口当たりのいい酒器を求められて考案した。ぐいのみは、縁が立ちすぎるので杯にし、できるだけ金属を薄くし、七宝焼きを施すことで酒が滑らかに流れ落ちる。釉薬には鉛が含まれているのが一般的だが、体内に入ると毒性があるため、発色や密着性が劣るのを承知で鉛を含まない釉薬でつくっている。
ほかにも1990年代の第2回スペイン国際七宝展の招待作として制作した「赤蜻蛉文香合」も。ひとりの作家の作品群とは思えない多様な作品が並んでいる。あわせて枝村さんが創作に使っている釉薬や研磨器具、指導用に使っている工程見本も展示して手の内を明かしている。
枝村さんも「いろいろやることで、形まで自分でコントロールできる」と言う。反面、「取材での良く何を見てほしいかと聞かれるが、ひとつひとつの作品に込めた思いをみんな見てほしい」と願っている。
また、今回は7日の作品解説会から11日のジャズコンサート、14日の七宝ブローチ製作体験会、15日のカフェ開設、20日のMINI対談会と、関連イベントがめじろ押しだ。
月曜は休館日で会期中は8日、16日、22日、24日に休む。開館時間は午前9時から午後4時半まで、入館料はおとな300円、子ども100円。関連イベントは次の通り。
作品解説会
日時:9月7日(日)14:00〜15:00
場所:燕市産業史料館 企画展示室 解説:枝村佐門
森泰人× ファビオ・ボッタッツォ ジャズコンサート
日時:9月11日(木)18:30〜(開場18:00)
ストックフォルム在住のジャズベーシストと新潟市在住のジャズギタリストの奇跡のコラボレーション
場所:燕市産業史料館 多目的ホール
料金:無料(ただし入館料は必要)
予約:不要
七宝ブローチ製作 体験会
日時:9月14日(日)10:00〜15:00 ※途中休憩有り
世界に一つしかない七宝ブローチを製作する。
場所:燕市産業史料館 多目的ホール
費用:3,000円(要予約)【申し込み締め切り9月9日】
定員:10名(先着順))
史料館でカフェ! 「ハッピーカフェ」
日時:9月15日(祝月)10:00〜12:00・13:00〜15:00
史料館にハッピーマンデーにだけカフェが出現。おいしいコーヒーを飲みながら史料館でゆったりと時間を過ごす。
協力:ツバメコーヒー(コーヒーは無料だが入館料がかかる)
【MINI対談会】麗しき七宝の世界
日時:9月20日(土)14:00〜15:30
場所:燕市産業史料館 多目的ホール
講師:枝村佐門
七宝作家枝村佐門を迎え、人々を魅了する美しき七宝の歴史や、珍しい「泥七宝」の技法など、奥深い世界を伝える。また、作品展にも展示されている七宝「恋杯」を実際に使用できる。