三条市諸橋轍次記念館(羽賀吉昭館長)は13日、同記念館で講演会「漢字研究の最前線ー木簡と人名の漢字についてー」を開き、早稲田大学教授の笹原宏之さんが「人名と漢字」、(独)国立文化財機構奈良文化研究所アソシエイトフェローの井上幸さんが「日本古代の木簡に書かれた漢字」をそれぞれテーマに講演し、130人が聴講する盛況だった。
笹原さんは東京都出身で早大第一文学部卒。文学博士で、文部科学省の「常用漢字表」、法務省の「人名用漢字表」などの委員・幹事を務める。同記念館での講演は昨年に続いて2回目。昨年は地名をテーマに講演している。
昨年に続く来条に「第二のふるさとのような気がする」と始め、日本人の名字の概観、中国・韓国との名字の比較、名前の近年の流行などに話を進めた。長い名字に「勘解由小路」、「左衛門三郎」があること、名字が1字の中国は4700種類や韓国の286種類に比べて日本は20万種類、40万種類とも言われるほど名字の種類が多いことなどを話した。
近年、変わった名前が増えていることにふれ、字面から「腥」、「曖」、「胱」が使われることがあるが、「腥」は「なまぐさい」と読み、「曖」はぼんやりという意味、「胱」は「膀胱(ぼうこう)」の「胱」であり、あまり名前にふさわしくない漢字であると指摘した。
土地に固有の珍しい名字があり、名前から出身地を推測できることがある。笹原さんは東京出身のこともあり、「名前が手形の役割を果たしている。地方の香りがしてくるのがうれしい。人名は身近であり、笹原さんの話も笑いやジョークがたっぷりで、楽しみながら学んだ。
井上さんは兵庫県出身、武庫川女子大学文学部卒。同大学大学院をへて中国魯東大学外国語学部日本語画家教授、文学博士。同記念館が顕彰する漢学者諸橋博士が編さんした大漢和辞典にふれ、「大漢和のふるさとに来られてとても楽しい。学生のころから今でも何かあったら大漢和のお世話にならないことはない」と同記念館での講演を喜んだ。
木簡に記された漢字の使用頻度、漢字を習ったものと思われる習書木簡、木簡にある人名などについて話し、長岡市の和島の八幡林遺跡から出土した木簡も取り上げた。また、昔はひとつの漢字の書き方が1種類とは限らず、さまざまな書き方をしたことや漢字文化圏の中国、韓国と日本古代の漢字の比較などについて話した。