日本デザイン産業振興会は2日発表した「Good Design Award 2014」で、ドライバーを中心とした作業工具メーカー、株式会社兼古製作所(兼古耕一社長・本社三条市塚野目)の「スリム絶縁ドライバー」は、特別賞の候補となる「グッドデザインベスト100」を受賞した。同社では1995年に中小企業庁長官賞を受けて以来の好成績で、それを上回る成果も期待される。
受賞したスリム絶縁ドライバーは、の特徴は文字通り軸の細さにある。電気工事は通電していない状態で行うことになっているが、何らかのミスで通電していた場合にも感電しないよう、電気を通さない絶縁ドライバーが使われる。
従来の絶縁ドライバーは、先端を除いて軸をゴムのチューブで覆っているが、欠点はゴムの厚さの分だけ軸が太くなること。例えば配電盤に並んでいる端子は、ドライバーが接触してショートしないように端子の間にリブと呼ばれる仕切りが設けてある。そこに軸が太いドライバーを差し入れると端子が見えなくなり、作業性が悪くなる。
そんなユーザーの声を聞いて、改善に取り組んだ。軸の先端部分を残して軸を細く削り、プラスチックをかぶせることにした。具体的には軸の先端は直径6.0ミリだが、そのすぐそばを直径4.8ミリまで削って細くした。プラスチックの厚さが0.6ミリあるので、足してちょうど6.0ミリ。これで軸の先端とプラスチックをかぶせた軸の部分の直径を同じにした。
これにより軸が視界を遮ることなくすき間からねじを見ることができ、作業性の向上は歴然。アイデアを思いつくのは早かったが、プラスチックの射出成形など生産方法の工夫の方が時間がかかった。
ただ元々、同社はプラスチック成形は得意にしていたので、それほどハードルは高くなく、思った通りの製品を完成させた。小売価格も標準タイプで900円からと従来品と同程度に据え置くことができた。耐電圧は1000ボルトと表示しているが、社内では1万ボルトで全品検査を行っており、信頼性もこれまでと変わらない。
今春発売し、これまでの絶縁ドライバーと比べて優位性は明らかな。兼古敦史常務は「前評判が良く、予想以上に売れている」と喜びながらも「これからリピーターが増えれば人気は本物」と慎重だ。
同社はグッドデザインの受賞に積極的で、これまで30年くらい受賞を続けている。地元でこれだけ長く受賞を続けている会社はない。
「グッドデザイン賞はスタイルだけでなく、新規性や使いやすさ、機能性も問われ、壁を乗り越えて受賞したときに、いい製品が生まれたと確信できるのでは」と兼古常務。11日に東京ミッドタウンでベスト100を対象にしたプレゼンテーションが行われ、11月4日にグッドデザイン大賞、グッドデザイン金賞など特別賞が発表される予定で、同社は95年の中小企業庁長官賞以上を目指す。