11月15日、上越新幹線が開業して32年となります。新幹線開業とともに開業した燕三条駅もまもなく32年となります。この駅の駅名についてさまざまな論争があったことは県央地域に住んでいる方ならば一度は聞いたことがあるでしょう。ですが今回の話は駅名とはまた別の話。
三条市と燕市にまたがる
燕三条駅は三条なのか?それとも燕なのか?。燕三条駅の敷地は三条市と燕市の境界にまたがっていますが、正式な住所は「新潟県三条市下須頃」となっています。これは駅長室の場所が三条市側にあるためです。三条口を出たところは三条市、燕口を出たところは燕市と、出口の名前がそのままどちらのまちかをあらわすようになっています。
余談になりますが、燕三条駅の近くにある三条燕インターも三条と燕の境界上に位置しており、こちらの住所は「新潟県燕市佐渡」となっています。
電気、ガス、水道は?燕市史に見られる記述
さて、こうして燕三条駅に纏わる話を見聞きするとひとつの疑問が湧いてきます。「燕三条駅の電気・ガス・水道、その他もろもろはどうなってるの?」。燕市史(1993年刊行)にこの疑問の答えとなる記述を見つけました。
「駅舎内の諸設備、特にライフライン系統はいささか事情が異なっている。電気は東北電力の供給によるから問題はないが、水道とガスは燕市からの供給を受けているのである。水道については、両市に打診があったが、三条市から引いたのでは工事費が増大し負担が大きくなるため、距離にして一キロほどの燕市からの供給が決まった。都市ガスの供給は、三条市が民間会社の北陸ガス、燕市は市営(筆者注:燕市営ガスはのちに白根ガスに事業譲渡)である。これも工事費と供給単価の違いから、水道と同時に燕市からの供給に決まった。」(p.888)
現状もこの記述のままとなっているかは不明ですが、少なくとも開業当時はガスと水道は燕側から供給されていたようです。
電話、郵便、警察は?
電話については三条・燕の両市から電話線が引かれたという記述があります。燕三条駅にある施設の電話番号を見ると、市内局番が三条市を表す「3」で始まっています。駅構内に燕市を表す「6」から始まる番号がないことから、電話番号は三条局で管理されているのでしょう。
郵便はどうかと見てみると、三条口に郵便ポストが設置され、燕口には設置されていません。ポストの表示を見ると「三条局」と書かれているため、郵便も三条側の管轄になっていることがわかります。
駅構内に交番がありますが、こちらも「三条署」の管轄。やはり駅の所在地が三条市となっているため、郵便や警察の所管も三条になっているのでしょう。
三条市と燕市にまたがる燕三条駅。実はこのように境界をまたがる駅は他にもあります。JRでいうと東海道本線の山崎駅は京都府大山崎町と大阪府島本町にまたがり、市町村の境界どころか府の境界にまたがっています。西武鉄道にはその更に上を行く駅があります。西武池袋線の秋津駅は東京都清瀬市、東京都東村山市、埼玉県所沢市にまたがり、三つの市と、さらに都県境にもまたがるという駅です。
鉄道趣味には乗ったり撮ったりとありますが、駅という設備に注目するとまた楽しみが広がっていきます。
(藤井芳輔)