19日に3歳の長女心優(みゆ)ちゃん(3つ)を橋から西川に落として死なせた燕市吉田堤町、事務員佐藤あゆみ容疑者(24)は、燕市に養育疲れを相談しており、心優ちゃんも親の離婚などで不安定な状態にあり、燕市は要保護児童として対応するなかでの悲劇だった。
燕市は21日午後2時から市役所で記者会見を行い、小林恵美子健康福祉部長をはじめ社会福祉課と子育て支援課の課長、担当した家庭児童相談員など6人が会見した。
会見によると、佐藤容疑者はことし2月に前夫と離婚して市内から吉田堤町のアパートに転居した。娘と2人暮らしだったが時々、訪れていた彼氏と間もなく同居になった。心優ちゃんは8月から燕市立よしだ保育園に通っていた。
佐藤容疑者は、育児疲れでいらいらすると9月8日に市役所へ養育疲れの相談に訪れた。心優ちゃんが寝てもすぐに起きて夜泣きし、佐藤容疑者は自分の時間がまったくない状況で、この子がいなければ自分の時間が設けられるのではと、施設を検索している自分にはっと気が付き、これではいけない、助けてくださいと救いを求めた。社会福祉課児童福祉係の家庭児童相談員が対応し、児童相談所の助言を受け、要保護児童として対応してきた。
両親の離婚で不安定になった心優ちゃんの対応について子どもの心が安定するための母としてのかかわり方を児童相談所に相談し、保育園と連携して佐藤容疑者に声かけと育児支援をしてきた。
具体的には最低1日1回、7秒間、「ママは心優ちゃん、あなたが大好きよ」と抱きしめながら耳元でささやくことを魔法の言葉として効果があるとアドバイスした。9月17日には、佐藤容疑者から1日2回、魔法の言葉を実践していると市に報告の電話があった。夜、泣かなくなり、朝までぐっすり眠るようになったと、びっくりしていた。それまで泣く心優ちゃんを無理矢理、保育園へ連れて行ったのが、泣かなくなり、こんなに違うのかと佐藤容疑者は驚き、ずっと続けていきたいといった内容だった。
担当者は佐藤容疑者の心が安定していると感じたが、10月15日に心優ちゃんが発熱したと保育園から電話があった。市では佐藤容疑者の携帯電話に電話したがつながらず、何回も電話してようやくつながると、佐藤容疑者は泣きながら、「わたしいっぱいいっぱいなんです。もう無理無理」と答えた。
児童相談所と相談し、佐藤容疑者の対応に問題を感じたため、一時保護も検討したが、近所に住む祖母(45)が迎えに来てくれることになったため、一時保護は取り消して引き続き見守ることにした。祖母から同居している彼氏に連絡がとれ、彼氏が迎えに来てくれると連絡があった。
翌10月16日、家庭児童相談員が家庭訪問した。佐藤容疑者によると、前日も子どもは嘔吐(おうと)し、せっかく敷いたシーツを汚していらいらしたが、我慢してシーツを片付け、取り替えて寝かせた。夜勤から帰った彼を起こさないようにそっと心優ちゃんを抱いてコンビニ店へ行き、朝ご飯を食べさせ、保育園へ送った。
仕事は休みの日だったが、仕事だと言って保育園に預けた。彼氏も休みで、ふたり一緒に過ごしていたら保育園から迎えに来てほしいと電話が来た。やっぱりか、どうしてこういうときに熱を出すのかといらいらした。6時半に延長保育が終わるため、6時20分ころに佐藤容疑者は彼氏に諭され、保育園に電話をすると、園長から祖母が迎えにきたと伝えられた。
保育園では常に心優ちゃんの身体的虐待に注意を払い、引き続き佐藤容疑者のようすに注意し、育児支援を行ったが、不安定なようすは見られず、児童にも身体的な虐待の痕跡は見られなかった。そんな矢先の20日午前11時43分、燕署から児童がいなくなって捜索中だと連絡が入った。
19日夜に心優ちゃんを殺害する前の17、18日は、心優ちゃんは発熱で休園。19日は佐藤容疑者とともに登園。帰りも6時半ころに佐藤容疑者が迎えに来て一緒に帰った。保育園でのようすはまったくふだんと変わりなかったが、その夜に佐藤容疑者は心優ちゃんを西川に落とした。21日の司法解剖で、死因は水死とわかった。
心優ちゃんのかかりつけは、たかだ小児科医院だが、風邪が長引いていたため、祖母は県立吉田病院の受診を勧めていた。そして20日、佐藤容疑者は県立吉田病院の駐車場で車から下りたところで携帯電話をなくし、探している間に子どもがいなくなったと作り話を同病院の窓口で話した。
心優ちゃんは3歳にしては言葉が少なかったが、1歳半の健診では良くしゃべっていたとのことで、家庭児童相談員は、離婚の経緯などから心優ちゃんが心を閉ざしたのではないかとみていた。また、最初の相談で佐藤容疑者にはネグレクトのような傾向があると感じた。
小林健康福祉部長は、「これを反省材料にし、このようなことが二度と起こらないようわたしども今まで以上に十分、児童相談所と連携をとりながら一生懸命、該当の方に声をかけ、支援をさせていただきたい」とした。
また、一時保護していれば今回の事件を防げる可能性があったことについては、「そのときは担当も含めて児童相談所と状況を確認し、どうしたらいいか十分、議論を尽くした。一時保護も考えたが近くに祖母も住んでおり、見守りがきちんとできるという判断からそのお母さんも一生懸命やろうとしているなかで、一時保護よりもお母さんの元でおばあちゃんの援助を受けながら支援ができるという判断をした」と話した。
現在、市内には72人の要保護児童があり、家庭児童相談員は2人の体制で対応している。