燕市産業史料館では、30日まで「午来馨(ごらい かおる) 鉄の造形展」を開いており、地元ではなじみのある銅と違った鉄を素材にした午来さんの金工作品を展示している。
午来馨さん(38)は北海道斜里町出身。新潟へ移り、県立高田工高、長岡造形大造形学部造形研究科を修了し、02年「アトリエ ヴァルカン」に所属、03年は長岡造形大学工房職員として勤務、県展工芸部門で奨励賞を受賞、東京・銀座で開かれた「KIT」グループ展に参加。その後もグループ展や個展を精力的に開き、06年には山古志復興応援フェニックスモニュメントを制作。個展は12年に長岡市のmu・anで開いて以来。現在は長岡造形大学の非常勤講師を務める。
今回は11点を展示。3日開かれた作品解説会には、地元燕市の鎚起銅器職人や長岡造形大の学生など20人余りが参加し、午来さんから創作に対する考え方や鉄という素材の特性、それぞれの作品に込めた意図や技術などについて聞いた。
午来さんは、再生や循環をテーマに制作し、動と静を考えるいることを話した。顔をモチーフにした作品は、顔全体を完成させず、途中で切断したり、なだからに面に戻したり。午来さんは「末端の形状をあいまいにし、顔を欠落させることで、見る側で欠落した部分をイメージしてほしい」。
会場の空間構成にも工夫した。結果的に通路を作るように2列に並べた。古代の神殿をも思わせ、「ぼくの性格があらわれていると思った」、「自然と宗教観があらわれてしまう」と自身を分析した。
技術にもこだわっている。「大学で学んだことは非常に貴重」で、「見る人の心にすんなり入るには、それなりの技術が必要」と考えていることなどを話し、来場者は熱心に聞き入っていた。
燕市内での仕事が増えたこともあり、12月1日に燕市内へ拠点を移すことになり、市内に自身の仕事を紹介するうえでもタイムリーな個展。地元の鎚起銅器の素材の銅は柔らかいが、鉄はそれよりはるかに硬い反面、加工するときは火造りするので銅より柔らかくなる。
「銅と違った硬さと柔らかさを感じてもらえるのでは」、「薄い素材で堅牢(けんろう)なものが作れる鉄の特性を感じてもらいたい」。また、鉄はさびやすく、「土に返ろうとするところを意図的にとどめることで作品にできないかと考える」と午来さんは鉄の創作にこだわっている。
今後の休館日は25日、開館時間は午前9時から午後4時半まで。入館料は高校生以上300円、小中学生100円、小学生未満は無料、土、日曜と祝日は燕市内の小中学生と付き添いの保護者1人が無料。