三条市の市民団体有志でつくる「五十嵐川を愛する会」(箕輪勲男会長)は5日、三条ロイヤルホテルで「7.13水害10周年記念講演会」を開き、会員と一般など45人が参加して三条地域振興局の酒井公生地域整備部治水課長を講師に「五十嵐川の治水対策について〜地域に愛される五十嵐川へ〜」のテーマで聴いた。
酒井課長は、五十嵐川の治水、利水・河川利用、河川環境の大きく3つの内容で話した。平成16年の7.13水害から7年後に襲った平成23年7月新潟・福島豪雨による被災からの五十嵐川災害復旧助成事業の内容や進捗状況、江戸時代初期からの五十嵐川の河道の変遷、笠堀ダム建設の変遷、治水の取り組みのソフト対策、五十嵐川の河川環境改善などについて、プロジェクターで写真や図などをふんだんに投影しながらわかりやすく説明した。
五十嵐川災害復旧助成事業は、事業延長約27kmで、事業内容は河道改修、遊水地、ダム嵩上げ。事業期間は平成23年度から平成29年度の6年間で、総事業費は約300億円。遊水地の整備は、面積約40ha、洪水調節容量約180万平方メートルでで、県庁10杯分を蓄えることができると話した。ダムのかさ上げは、現在の笠堀ダムを4メートルかさ上げして、洪水調節機能を増強する。
被災から10年たった7.13水害対応の五十嵐川災害復旧助成事業にもふれ、約400棟の家屋移転を伴った同事業は、地域の協力なくてはできなかったことと改めて話した。
また、五十嵐川における新潟・福島豪雨による課題として、ひめさゆり湖や五十嵐川の濁り、河床に石や礫(れき)がなくなった状況を示し、「良質な水道原水の確保から薬品流入量の増加」、「魚類や昆虫類等の生物の生息環境の改善、アユの不漁」をあげた。
その対応として、上流域の荒廃対策、ダム貯水池の濁水対策、下流河川への土砂還元試験、下流河川への魚類や昆虫等の生息環境の創出として、河川管理者や森林管理者などの取り組みの状況を説明した。
酒井課長は最後に、一新橋下流から昭栄大橋までの右岸に7.13水害の復旧工事終了後に植栽してまもなく7.29水害ですべてが流されてしまい、再度、市民の手で植えたピンク色の花を咲かせる「シバザクラが復旧のシンボルになる」と締めくくった。
「五十嵐川を愛する会」は7.13水害の復旧工事が始まった五十嵐川に市民から親近感をもってもらおうと水害の翌年に市民有志で発足し、五十嵐川の河川敷でクリーン作戦やシバザクラの植栽を行っている。