今回の総選挙で自公が大勝するのは火を見るよりも明らかだった。個々の候補者の当落を除けば、関心は投票率くらいと思っていた。結果、投票率は52.66%。おととしの前回衆院選の59.32%を6.66ポイント下回り、戦後最低を更新した。
選挙前はさまざまな言論空間で、大義がないなどと総選挙の意味が問われた。そうしたなか、最も興味深かったのがラジオ番組での討論だった。
社会学者で東京大学大学院情報学環准教授の北田暁大氏は、選挙そのもの意義も含めて選挙で問うとした安倍首相の発言を引き合いに出し、「投票率で安部さんは審判を仰いだらいい」、「例えば50%を切ったら退陣とか」、「それくらいのハードルを設けるべき」とした。
政治学者で北海道大学法学研究科准教授の吉田徹氏は、「選挙至上主義は民主政治に逆機能する悪い面が出たりする」、「代議制民主主義は19世紀の民主政治のモデルで、今や言ってみれば型落ち」でバージョンアップが必要。前回総選挙が史上最高の棄権率だったときに、それは政治に対する強烈なメッセージになり、「棄権しても重要な政治的なメッセージになり得る」などと論じた。
さすがに50%は切らなかったが、戦後最低の投票率。安倍首相の満面の笑みが報道されたが、投票率を考えると何とも違和感がある。もちろん、絶対安定多数を確保したことは、党全体として喜ぶべきことだが、内部から低投票率の責任を問う声が出てこないのだろうか。
派閥政治の時代だったら、こうはいかなかった気がする。倒閣を企てる派閥から低投票率が格好の攻撃材料になったのではないか。ところが、現実には安倍首相の政権基盤を強化しているとか。真逆な感じがする。