小池清彦加茂市長は16日、新潟県が発表した加茂病院の改築事業基本設計について、将来も見越して増床などを求める要望を行った。
午後2時から加茂市役所で会見を開き、この日の午前中に池田副知事を通じて泉田裕彦県知事あてに「新潟県立加茂病院改築事業基本設計に対する要望書」を提出したと話した。
加茂病院の基本設計は、14日に県が発表したもの。要望書では、最初に「4階建て一部5階建てのこの基本設計を改めて、完全5階建てとしていただきたい」と求め、病床数の50床増と産科個室20室以上増、病児・病後児保育施設設置などを求める小池市長の案では、現在約1万平米の延べ床面積が、基本設計では13,000平方メートルなっているが、さらに2,000平方メートル増の15,000平方メートルを提案する。
「新設の建物は、今後50年、60年は建て替えられずに存続することになる。一方、医学の進歩は驚異的であり、新たなスペースが次々と必要になってくることは確実」と述べている。
このほか、15の診療科すべてに常勤医師を求め、麻酔科の設置、がんの早期発見に能力を発揮する「PET-CT」の設置、透析の実施について、病室の冷暖房の夜間作動など10項目を記している。
小池市長は、「極めて重要な要望」と話し、建設されてしまえば50年は建て替えられえないので、取り返しがつかないと述べ、「加茂病院の将来を真剣に考えて持って行った」、「加茂市の一世一代に関わること」と内容を説明した。要望書は次の通り。
総 第35号
平成27年1月16日
新潟県知事 泉田裕彦様
加茂市長 小池清彦
新潟県立加茂病院改築事業基本設計に対する要望書
このたび平成27年1月14日付で新潟県立加茂病院改築事業基本設計が発表されましたが、これに対し、下記のとおり御要望申し上げます。
記
1 4階建て一部5階建てのこの基本設計を改めて、完全5階建てとしていただきたい。
なお、6階の多目的ラウンジは、この基本設計のとおりで結構です。
この結果、現在の加茂病院の延床面積が約10,000m3となっているのを、この基本設計では、延床面積が約13,000m3となっておりますが、当方の提案では、15,000m3となります。
県立加茂病院と同規模(179床)の福井県鯖江市にある2市3町の組合立の公立丹南病院は、最近建て替えられた病院ですが(平成24年5月新病院で診療開始)、延床面積は、15,070m3であります。
2 病床数は、この基本設計では180床となっているのを50床以上増やし、230床以上としていただきたい。
3 この基本設計では、産科の個室は4室以下であります。これでは全く不十分ですので、20室以上にしていただきたい。通常の民間病院と同様に、産科の入院室は、すべて個室にしていただきたい。
4 この基本設計の段階では、15の診療科のうち、皮膚科、神経内科、放射線科、リハビリテーション科には、常勤医師が置かれないことになっています。すべての診療科に常勤医師を置いていただきたい。
5 麻酔科を設置していただきたい。
6 加茂市の3つの特別養護老人ホームに、加茂病院から往診をしていただきたい。
7 加茂病院に病児保育園即ち病児・病後児保育施設を設置していただきたい。
8 がんの早期発見に絶大な能力を有するPET−CTをぜひとも設置していただきたい。
9 新しい加茂病院においては、病室の暖房と冷房を夜に停止することなく、一晩中作動させていただきたい。これに関連して、病院中の各室で「入」「切」ができるようにしていただきたい。
10 透析については、加茂市で大勢の患者に行っておられる病院があるので、この病院とは調和を保ちつつ、加茂病院でもできる態勢にしていただきたい。
〔 説 明 〕
1 建物の形状及び延床面積について
(1) 新しい加茂病院は、新しく建てられる「救命救急センター併設の基幹病院」の第一の補完病院であります。従って、後述のように極めて多くの患者が加茂病院に搬送されて来ます。また立派で重要な加茂病院には、多くの救急患者が直接搬送されて来ます。従って、150床から100床に減らされてしまった一般病床では、到底対応しきれず、50床以上の増床が必要になります。
(2) また、産科の入院の個室は、4室以下では到底足りず、20室以上が必要であります。
(3) そのためには、延床面積を大幅に増やす必要がありますので、6階の多目的ラウンジは別として、4階建てで一部5階建てのこの基本設計を変更し、完全な5階建てとされますようお願い申し上げます。
(4) この結果、延床面積は、13,000?が15,000?となります。
(5) 県立加茂病院と同規模(179床)の福井県鯖江市にある2市
3町の組合立の公立丹南病院は、最近建て替えられた病院ですが
(平成24年5月新病院で診療開始)、延床面積は、15,070?であり、加茂病院の基本設計は2,000?も少なくなっており、甚だ狭あいであります。
(6) 新設の建物は、今後50年~60年は建て替えられずに存続することになります。一方医学の進歩は驚異的であり、新たなスペースが次々に必要となってくることは、確実であります。このためにも、完全な5階建ての建物とし、延床面積を15,000?とすることは、絶対に必要であります。
2 病床数について
(1) 新しい加茂病院は、新しく建てられる「救命救急センター併設の基幹病院」の第一の補完病院であります。
(2) ところが、基幹病院の救命救急センターは、最も規模の小さい部類の19床のものであります。しかるに、このセンターには、極めて多くの救急患者が搬送されて来ますので、各救急患者を長く置いてはおけず、第一の補完病院である加茂病院には、極めて大勢の患者が基幹病院から搬送されて来ます。
(3) 一方、この基本設計では、療養病床を30床から50床に20床増やし、新たに緩和ケア病床を30床設けることにしたため、50床の増床が必要となり、その分一般病床を150床から100床に減らしております。
(4) しかし、新しい加茂病院は、立派で重要な病院となるのであり、入院患者は多くなります。
(5) さらに基幹病院の第一の補完病院として、基幹病院から搬送されて来る極めて多数の患者に対し、また、さらに立派になった加茂病院に直接搬送されて来る多数の救急患者に対し、わずか100床で対応することは、不可能であります。
(6) 他方、厚生労働省が定めた病床数の基準によれば、県央地域には、78床の病床が余っており、これだけの余裕があります。このうち50床以上を加茂病院の一般病床を元へ戻すのに使うべきであります。
3 産科の個室について
(1) 民間病院では、「産科は個室」が常識であります。民間病院では、ホテルのような個室を備えることを競っております。その結果、妊婦の方々は、豪華な個室によって、入院する病院を決めているのが、実情であります。その病院の医師と助産師の数や緊急な場合の対応能力で病院を決めているのではないのです。
(2) 以前に加茂病院の産科へ来る妊婦が減ってしまったのは、まことに単純な理由によるのであります。加茂病院には入院の個室が極めて少なく、民間の病院には、豪華な個室が十分にあるというただそれだけの理由で、加茂病院の産科へ来る人が減ってしまったのであります。
(3) この基本設計では、産科の個室は4室以下ですので、話になりません。再び以前の加茂病院同様、妊婦が来なくなります。
(4) 産科には、20室以上の個室が必要です。通常の民間の産科病院では、19室の個室を持っているのです。通常の民間病院と同様に、産科はすべて個室にしなければ、以前と同様妊婦は加茂病院へは来ません。
(5) 毎年の出産数は、加茂市で約180人、田上町で約70人です。さらに新津にも、五泉にも、阿賀町にも、産科はありません。従って、加茂病院は、毎年500人以上の妊婦を受け入れる必要があります。この方々をすべて個室で受け入れるのでなければ、妊婦の方々は加茂病院へは来ません。その結果、加茂、田上、新津、五泉、阿賀町の妊婦の方々は、塗炭の苦しみを受けることになるのであります。
4 すべての診療科への常勤医師の配置について
(1) 加茂病院は、県立の立派で重要な病院である以上、15の診療科のすべてに常勤医師を置く必要があります。
(2) 特に加茂病院は、「救命救急センター併設の基幹病院」の第一の補完病院であります。他方、基幹病院の救命救急センターは、わずか19床の小規模のものです。従って、救命救急センターへ搬送された救急患者は、基幹病院へ長く置いておくことはできず、搬送入院後短期間のうちに加茂病院へ搬送されて来ます。また、立派で重要な加茂病院には、多数の救急患者が直接搬送されて来ます。救急患者の診療科は、すべての診療科にわたりますから、15の診療科のすべてに常勤医師を配置することがぜひとも必要であります。
(3) この基本設計の段階においても、県当局は、依然として、15の診療科のうち皮膚科、神経内科、放射線科、リハビリテーション科には、常勤医師を配置しないことになっているとのことですが、上記の理由から見れば、この4つの診療科にも常勤医師を必ず配置する必要があります。
5 麻酔科の設置について
(1) 新しい加茂病院は、立派で重要な県立病院であります。また、「救命救急センター併設の基幹病院」の第一の補完病院であります。
(2) 従って、高度の手術がなされることになり、また、救急搬送後短期間に患者が送られて来ますので、急遽高度の再手術をする必要が生ずることもあります。
(3) また、こうした立派で重要な病院ですから、多くの救急患者が直接加茂病院に搬送されて来ますので、高度の手術がなされることになります。
(4) このため、麻酔科をぜひとも設置する必要があります。
(5) 加茂病院と同規模の福井県の公立丹南病院には、麻酔科が置かれています。
6 加茂市の3つの特別養護老人ホームへの往診について
(1) 新しい加茂病院の基本理念では、「地域の人々の健康維持・増進に貢献します。」とされ、また、基本方針では、「地域社会及び他の医療機関との密接な連携に努めます。」、「適切な高齢者医療を行います。」とされています。
(2) かつて、加茂市の特別養護老人ホームが1つだけあった当時は、加茂病院の医師が加茂市の特別養護老人ホームへ往診しておられました。それが、その後来なくなってしまわれたのであります。
(3) 加茂市の3つの特別養護老人ホームでは、医師の確保に大層苦しんでおります。現在は、週1回午後に、三条市の大渓秀夫先生が平成園と第二平成園へ、加茂市の小池昭彦先生が第三平成園へ往診しておられます。両先生からは、早く後任を探してほしいと要望されておりますが、後任の先生が見つからない状況であります。
(4) 新しい加茂病院の基本理念と基本方針にのっとり、ぜひとも新しい加茂病院からの往診をお願い申し上げます。
7 病児保育園(病児・病後児保育施設)の設置について
(1) 平成27年1月14日佐藤田上町長と私加茂市長とで、この要望をさせていただきました。
(2) 病児保育園(病児・病後児保育施設)は、現在その必要性が強く叫ばれているものであります。現在は、女性の社会進出が一般化し、いわゆる夫婦共働きが圧倒的に多くなっております。この場合、子供が病気になりますと、夫婦のいずれか、通常の傾向としては母親が仕事を休まざるをえなくなります。しかし、仕事を休むことには、大きな困難が伴っておりまして、病気の子どもを預かる病児保育園(病児・病後児保育施設)の設置が今や必要不可欠となっております。
(3) しかし、病児保育園(病児・病後児保育施設)には、看護師だけでなく、医師の存在が不可欠なため、加茂市でも田上町でも、これを設けることが不可能な実情にあります。
(4) 一方、県立加茂病院と同規模(179床)の福井県鯖江市にある2市3町の組合立の公立丹南病院は、最近建て替えられた病院ですが(平成24年5月新病院で診療開始)、そこには病児・病後児保育施設が設置され、鯖江市から委託を受けております。(他市町村の乳幼児が利用した場合には、鯖江市が費用を立て替えております。)
(5) 加茂市と田上町に病児保育園(病児・病後児保育施設)を設けるためには、新しい加茂病院に設置していただく以外に方法はありません。
(6) 幸いに、基本設計では、病院の職員のための保育所が設けられることになっておりますので、加茂市民と田上町民のための病児保育園(病児・病後児保育施設)をも設けていただきたく、強く御要望申し上げます。
(7) この件について、早急に協議に入らせていただければ、有難く存じます。
8 PET−CTの設置について
(1) 医学の進歩は、めざましいものがあり、多くの病気が治る時代となりました。とりわけ「がん」は、早期発見が最も重要であります。「がん」の早期発見において、最近大きな威力を発揮しているのがPET−CTであります。これは御承知のように、受診者を全身このPET−CTにかけますと、「がん」のある部位あるいは「がん」が疑われる部位が光るというものであります。
(2) このPET−CTは、今や病院において、なくてはならない医療機器となっているものであります。いわんや新しい病院においては、優先順位第一で備えつけなければならない医療機器であります。ぜひとも設置をよろしくお願い申し上げます。
9 夜間冷暖房を止めないことへのお願い
(1) 現在の加茂病院には、高橋芳右院長先生をはじめとして名医がそろっておられ、看護師さん、技師さん、事務局の方々も、それぞれ練達しておられます。そして、患者さんに優しくして下され、患者の方々の評判も極めて高いものがあります。
(2) しかし、1つだけ問題なのが、夜になると入院室の冷暖房を止めてしまわれることであります。これは病人の病状を悪化させることにもなり、付き添わなければならない状況にある人達にとっても、苦しいことであります。
(3) 新しい加茂病院は、最も近代的な立派な病院になります。新しい加茂病院においては、夜も絶対に冷暖房を停止されないよう強くお願い申し上げます。
(4) そのため、冷暖房は1日中昼夜ともに作動させていただき、病院中の各室で「入」と「切」ができるようにしていただきたく、何とぞよろしくお願い申し上げます。
10 透析について
(5) 透析については、加茂市において、さくらクリニックで大勢の患者に行っておられ、心から感謝しております。
(6) しかし、新しい加茂病院は、立派で重要な病院でありますので、加茂病院では透析ができないというわけには行かなくなっていると思います。
(7) さくらクリニックとは調和を保ちつつ、加茂病院でも透析ができる態勢にしていただくようお願い申し上げます。