燕三条青年会議所(石黒良行理事長)は8日、燕三条地場産業振興センターで2月公開例会を開き、親の徳育に関する講演会としてアルピニスト野口健さんから「子供に誇れる姿とは」をテーマとした講演に900人余りが来場して聴き入った。
一般814人、青年会議所メンバー120人の934人が参加した。冒頭、石黒理事長は、未来を担う子どもたちのために地域の子どもたちは地域で育てるということをおとな、親が自覚し、「おとなとして子どもたちの手本となる行動をとっていただきたい」と求め、三上正行燕三条徳育推進委員会委員長の趣旨説明に続き、野口さんが講演した。
野口さんは昨年2月にも燕三条で講演しており、その後2回、ヒマラヤへ行き、この日もヒマラヤから帰ったばかり。山に登り始めて二十数年、ごみ拾いを中心とした環境活動を始めて十数年になると言う。
登山を始めたきっかけから話した。高校に進学して2カ月後に学校でけんかになり、相手をなぐって1カ月の停学になっていたとき、ふらっと入った書店で出会った冒険家植村直己の著書『青春を山に賭けて (文春文庫)』に出会い、買って読んだ。植村さんのサクセスストーリーより悩みやコンプレックスに共感。「こんなぼくでも何かひとつこつこつやっていけば何かができるのかも」と思い、「救いを求めるように山に登り始めた」。
野口さんは、登山と同時に山でのごみ拾いをはじめ、近年は地球温暖化による氷河の融解防止に向けた対策、日本兵の遺骨収集活動などにも力を入れている。
登山を始めた当時は「環境のことは何も考えず、落ちこぼれた自分のために山に登り始めた」。8千メートル級の山に登頂するには酸素ボンベを3本ほど持っていく。登頂後、下山のときはあまりの苦しさに空になった酸素ボンベを置いてきた。とにかく楽になりたかった。
しかし、ごみには置いてきた人間の悪意が乗り移り、悪意のようなものがそこに気のように広がり、「そこにある木が枯れていき、自分たちの心が汚れていく」。ごみを見て感じたことは、そこでどいうことが起きてるか知り、どうしても気持ちのなかで背負ってしまう。「簡単に言うと現場に行っちゃって、見ちゃって、知っちゃって、背負っちゃって、そっから活動。意外とシンプルなもの」で、気付くとそれがごみ拾いの活動につながっていた。
ごみを意識したきっかけは、外国の登山隊に富士山が世界で最も汚い山で、エベレストも富士山のようにするのかと面と向かって言われたこと。野口さんはヒマラヤ登山のトレーニングとして冬の富士山しか知らなかった。そこは雪と氷だけ、人もいない世界だったので、雪の下にあるごみには気づきもしなかった。
イタリアの有名な登山家、ラインホルト・メスナーさんが世界各地のシンポジウムなどで世界中で最も汚いのはマウント・フジと話していることを知ったのが、清掃活動のきっかけになった。
野口さんは日焼けして肌が黒く、上下とも黒い服でステージに立ち、ときには漫談のように笑いをまじえて、体験からしか得られない説得力のある話しで来場者を引きつけていた。