金子勉建築設計事務所(金子勉代表・東京都新宿区西新宿4)は21日、シェアスペース&ライブラリー「燕三条トライク」で第1回リノベーション講座「リノベーションのススメ」を開き、20人余りが参加してまだ地元ではなじみの薄いリノベーションについて聞いた。
会場の「燕三条トライク」を含め数多くの物件でリノベーションを手掛ける田中洋人建築設計室=新潟市中央区=の田中洋人さんをゲストに迎え、金子勉建築設計事務所の金子勉さんがリノベーションが増えている背景について話したあと、田中さんが実際にこれまで手掛けたリノベーションの実例を紹介した。
リノベーションはリフォームと混同されることがあるが、リフォームはも元の状態に戻す、原状復帰のような考えなのに対し、リノベーションは間取りを変えるなど新しい価値を生み出すようなものを指す。
田中さんは、人口減少の局面を迎えて新築住宅の着工数が減り、国内の住宅はすでに供給過剰状態にあり、その結果、中古住宅が余るとした。実際、空き家率は年々、増え続けており、現在は賃貸用と売却用の住宅を含めて13.1%の住宅が空き家になっている。賃貸用と売却用を除く空き家率は、全国平均5.25%に対し新潟県は7.23%と高い。
住宅が余ると中古住宅の価格が落ち、格安で中古住宅を手に入れ、リノベーションを行って自分らしい住宅をもつことが身近になった。実際、中古マンションなら200万円、中古の一戸建てでも土地付きで400万円ほどで手に入る物件を紹介。さらにネットで建材の購入が容易になり、電動工具の進化もあってDIYにも取り組みやすくなっている。
加えて住宅に対する考え方の変化もある。新築ならいいというものではなく、「新しいものがいい時代ではなく、古いものでもいいと言える時代」と金子さん。また、高価な住宅を買ってローンを払い続ける生き方を選ばない人が増えていることも指摘した。
田中さんは自身の家を含め、リノベーションした家のビフォーアフターの写真を映し、どんな中古住宅で顧客からどんな依頼を受け、どんな形にリノベーションしたかを紹介。同時に「リノベーションによってまちなかに住む人が増えるのでは」とも。
参加者は20人余りで、現実に中古住宅のリノベーションを考えいる人はもちろん、建築関係の仕事をしている人や空き家対策に興味のある人、まちづくりに生かせないかと考える人などさまざま。実際にリノベーションにはどれくらいの費用がかかっているのか、中古住宅は構造がわからないため費用の算出が難しいのではないか、リノベーションで優先することは何か、リノベーションできる物件の見極めなど、参加者から次々と質問の手が上がっていた。
新潟市出身で神奈川県横浜市に住む30歳代の女性は、田中さんに会いたいのと「燕三条トライク」を見て見たいのとで、弾丸ツアーで参加した。大学で建築を学び、建築関係の職場に身を置く。「地元が気になっていて、こっちに戻りたいという気も」と言い、それが現実味を増したようだった。
講座を主催した金子さんは、燕市出身で燕市にも事務所を置き、東京と新潟を行ったり来たりで「燕三条トライク」の利用会員。リノベーションの紹介とあわせて「燕三条トライク」のPRにもなればとリノベーション講座を企画した。
金子さんは「予想の倍くらい人が参加してくれた。こんなに興味をもってくれるとは思わず、リノベーションが注目されていると実感した」。今後も2カ月に1回ていどのペースで講座を開きたい考えで、「もう少しテーマをしぼってやっていきたい」と話している。