登校したら黒板がカンバスとなってアートが描かれている。武蔵野美術大学の学生による活動「黒板ジャック」が6日、県内で初めて新潟市西蒲区岩室地区の2つの小学校で披露され、児童を驚かせ、喜ばせた。
黒板ジャックを描いたのは、武蔵美の大学院生を含む4人で、岩室小学校と和納小学校のそれぞれ2クラス、計4クラスの黒板を1人が1クラスずつ担当して描いた。
岩室小では油絵専攻の大学院2年生石黒ゆかりさん(25)が5年生、大学4年生丸山恭右さん(22)が6年生の黒板を担当。前日5日に午後9時過ぎまで約6時間もかけて描いた。2人ともこれまで何度か黒板ジャックを行っている石黒さんは愛知県、丸山さんは静岡県の出身で、2人とも新潟県を訪れたのは初めて。
石黒さんは、イルカのような空想上の動物と、「岩室へ来る途中で見たい田んぼや畑をイメージした」背景を描いた。「もう3時間くらいあれば描き込めたけど、限られた時間のなかではうまくいった」と仕上がりに満足した。
丸山さんは、露天風呂に入ったサルにおじいさんが一升瓶で酌をし、一升瓶のラベルには「黒板ジャック」とあるユーモラスな作品。岩室温泉からイメージを膨らませた。「黒板ジャックは、なかなか慣れない。黒板とチョークの組み合わせて毎回、描き味が違う」と難しさを話した。
6日は午前7時半過ぎから児童が登校。いつもは何もない黒板を埋め尽くしたアートに「あれ?きれい!」、「何なの?これ?」、「めっちゃすげーな!」、「これ、ちょっとやばくない?」と声を上げ、4年生以下の児童も見学に集まった。日常的に使っているチョークがアートになるという意外性が児童を引きつけた。
武蔵美の2人を児童に紹介し、児童はどうやったら絵がうまくなるかや、チョークで絵を描くこつなどを次々と質問した。黒板は授業に使うので、始業時までに消してしまうのが黒板ジャックのルール。児童が黒板消しを動かすとあっと言う間に絵が消えていき、「もったいない!」とため息。
6年生はお返しに2人に合唱のプレゼントし、2人にサインももらっていた。6年生でいちばん最初に登校した木村陽樹くんは黒板ジャックに足を止めて目はくぎ付けに。「何が起きてるのかと思った。まさかこんな絵があるとは思わなかった。リアルに描いてあるのがすごい」と話した。
武蔵美では、学生が小中学校や高校を訪ねる「旅するムサビ」の一環として2011年から「黒板ジャック」を行い、これまでに首都圏を中心に十数校で描いたが、新潟県では今回が初めて。
一方、岩室温泉では、2003年から隔年で旅館に武蔵美の卒業制作作品を展示する「アートサイト岩室温泉」が開かれている。岩室温泉観光協会の岡崎昭会長(濱松屋旅館社長)がテレビで「黒板ジャック」を見かけ、武蔵美ならすでに岩室温泉に関係があるからと武蔵美に地元での「黒板ジャック」を依頼し、快く引き受けてもらった。
ことしの「アートサイト岩室温泉」は7日から15日まで。作品の展示作業を行うために5日から2泊3日の日程で岩室温泉を訪れている学生と一緒に大型バスに乗って訪れた。
岡崎会長は「ぜひ、子どもたちに黒板ジャックを見せたあげたいと思った。多分、一生の記憶のなかに残るでしょう」と児童の喜ぶ姿に目を細めていた。