7日から15日まで新潟市西蒲区・岩室温泉で武蔵野美術大学(甲田洋二学長・東京都小平市小川町)の卒業制作作品を展示する「アートサイト岩室温泉2015」が開かれている。その初日7日に行われたオープニングセレモニーに出席するため、甲田学長が岩室温泉を訪れ、黒い帽子に黒いコートで旅館に展示されている作品を見て回った。
アートサイトは2003年から1年おきに開かれてことしで7回目。今回は10の旅館に卒業制作作品50点余りを展示している。これにあわせて今回初めて岩室小学校と和納小学校の地元の2つの小学校で県内でも初めてとなる黒板ジャックが行われた。
黒板ジャックは内緒で教室の黒板にチョークで絵画を描き、翌朝、登校した児童生徒を驚かせるというプロジェクト。学生が小中学校や高校を訪ねる「旅するムサビ」の一環として2011年から取り組み、これまでに首都圏を中心に十数校で行っている。
甲田学長は、日本に限らず成果主義が氾濫するなか、美術教育が軽んじられているが、旅するムサビや黒板ジャックを通じて「根本的には現在の美術教育に対し、授業の時間が少ないなら少ないなりに、何らかの形で子どもたちに植えつけていかなければならないと信じ、応援している」。そのための土壌として武蔵美は「教員免許、美術教育、教育学と誇れるスタッフと結束力をもっている」と自負する。
「本当の意味の豊かさ、感性、個性、想像力と反するような教育現場になっている」と指摘し、「みんな絵描きになる、芸術家になるということではなく、そういう教育の場が少なくなっていることを残念に思う」。
その結果、「現場の教員たちが話を導入するときに、ゴッホがねだとか言うと、これがもう通じない。ゴッホを知らない。表面上の問題だが、本質はかなり深い。これでは美術をやろうだとか、デザインをやろうだとかいう内発的な必然性が生まれない」。
甲田学長がアートサイトを訪れたのは、すでに3回目。岩室の人たちとともに年々、向上させている姿を目の当たりにしてきた。「芸術文化学科が本当に感動するくらいに熱心に取り組んでいる」と言い、「それで町おこし的な要素も出てくればいい」と広がりに期待した。